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2012年10月26日 (金)

アルゴ

Argo_ver4アルゴ(2012)
ARGO

 ベン・アフレックが実話に基づいて製作・監督・主演したサスペンス。他の出演者はブライアン・クランストン、アラン・アーキン、ジョン・グッドマンなど。
 1979年2月、イラン革命が起こり、11月にアメリカ大使館が反米・反旧体制の学生などに襲撃・占拠された。大使館にいた52人を人質として、アメリカに亡命したパーレビ前国王引き渡しなどを求めた。人質のうち6人は脱出に成功し、カナダ大使の私邸に逃げ込んだ。しかし、発見されれば殺害される。CIAは救出するためにある計画を立案。それが「ニセSF映画撮影計画」だった。この事実は19年後に公表されるまで極秘となっていた。

 当時は『スター・ウォーズ』の大ヒットでSF映画ブームの真っ直中。この年、『エイリアン』が公開され、『スター・トレック』や『ブラックホール』が公開直前。その他、有象無象のSF映画が製作されていた。そんな中、ブームの前から企画されていたが、進展していなかったとある企画があった。CIAはこれを利用して、架空のSF大作『アルゴ』の製作発表を大々的に行う。その企画とは、ロジャー・ゼラズニーの『光の王』の映画化だった! そこでロケを行って製作者スタッフということにして、6人を出国させようというのだ。企画には『ファンタスティックフォー』などの有名アメコミ作家ジャック・カービーや、『猿の惑星』シリーズの特殊メイクアップアーティスト、ジョン・チェンバースの協力を得る。詳しくは英語サイトだが、こちらのサイトにある。
 残念ながら、映画の中では『光の王』というタイトルは確認できなかったし、どう見ても別の話である。もの凄く、どこかで見たような映画になってるのが逆に笑えるけど。
 なお、イラン・アメリカ大使館人質事件そのものは翌年4月に敢行したイーグルクロー作戦の失敗などで長期化し、1981年1月になって求めていた国王死去によって、ようやく解放されている。

 事実は小説より奇なりという。一方、実話の映画化はすべてわかっていることもあり、いまいちおもしろくならないともいう。しかし、事実が長年表に出なかった上に、これだけすっ飛んだ事実ならどうだ?
 土台は事実とはいえ、イラン側などは想像するしかないわけで、そこで映画ならではのサスペンスの盛り上げがあり、娯楽映画としても完璧。わかっていても、緊張感を煽ることに成功している。
 さらに、映画製作の舞台裏――敏腕プロデューサーのいい加減さとか、本音みたいなものまでちょっとだけこぼれるところや、ラストのほほえましさなど、映画好きにもこたえられない。オープニングのイラン革命の説明も映画ファンならニヤリとする方法で、引き込まれる。
 全編を覆う79年から80年という時代の臭いは映画のクレジットから始まり、徹底している。ワーナーのロゴ、(デジタルのくせに)フィルムノイズ、ファッション、実録映像……。
 実際の6人にそっくりな俳優もいいが、ベン・アフレックのプロらしい感情を抑えた演技がいい。監督と俳優、とてもいい仕事をしている。なによりも、SF映画とリアルなノンフィクションという本来なら対岸にある二つの要素を見事に橋渡しした手腕に賞賛を贈りたい。

 必見。

 ところで、ハヤカワSF文庫は『光の王』を復刊する気はないのかな? まあ、映画本編とはまったく関係がないけど、下記の映画原作には言及があるわけだし。

アルゴ (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

著:アントニオ・メンデス、マット・バグリオ
訳:真崎 義博
刊:早川書房

■AMAZON

 映画の主人公である作戦立案者トニー・メンデスによるノンフィクション。ジョン・チェンバースなどの名前が当時のコードネームのままで実名が伏せられていたりするのが違う点。


Argoアルゴ(2012)
ARGO

■AMAZON MP3
Argo: Original Motion Picture Soundtrack - Alexandre Desplat

 サントラ。
 音楽はアレクサンドル・デスプラ。舞台がイランなので、中東の民族楽器(ウード、ケメンチェ、ネイ、パーカッション類)と女性ヴォーカルがふんだんに使用され、民族音楽アルバムのよう。静かにサスペンスを下支えするスコアも、ラストシーンのヴォーカル曲も印象に残る。
 iTUNESの方が少し高いが、デジタルブックレットがついている。ダウンロードとAMAZON.COMからCD-Rのみ。

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