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2012年7月 4日 (水)

リジェクトスコア 15

 ジェリー・ゴールドスミスの最終回。

Babeベイブ(1995)
 /ジェリー・ゴールドスミス→ナイジェル・ウェストレイク

 オーストラリア映画。クリス・ヌーナン監督による牧羊子ブタの話。
 監督はシニカルなユーモアを持ったこの映画にダークな雰囲気を望み、ゴールドスミスと打ち合わせていた。90%近くを作曲したところで、製作者のジョージ・ミラーは(『マッドマックス』の監督なのに!)もっとファミリー向けの音楽を望み(しかも、暴力シーンもかなりカットした! 『マッドマックス』の監督なのに!)、結局、製作者の意向が優先され、降板。オーストラリア人作曲家のウェストレイクに交代になった。ミラーが監督に回った続編でもウェストレイクが音楽を担当している。

エアフォース・ワン(1997)
 /ランディ・ニューマン→ジェリー・ゴールドスミス

 ヴォルフガング・ペーターゼン監督、ハリソン・フォード、ゲイリー・オールドマン主演のアクション。大統領専用機がハイジャックされて、元空軍パイロットの大統領が大活躍。
 起用されたニューマンはこの手のアクション映画は初めてだったが、新機軸を打ち出そうと奮闘した。しかし、出来上がったスコアを映像に合わせてみて、監督は失敗に気づいた。銃撃やパンチなどのアクションのタイミングに音楽を合わせすぎてしまった(いわゆるミッキーマウジング)ために、コミカルに見えてしまったのだ。テロリストのモチーフのロシアっぽい曲もコミカルに響いてしまった。結局、リジェクトが決まり、ゴールドスミスが呼ばれる。録音するまで2週間しかなかったため、ジョエル・マクニーリーに手伝ってもらい、より愛国主義的なスコアを書き上げた。マクニーリーはゴールドスミスの指示に従って作業をしたので、ほとんど自身のアイディアは入れていない。ただ、オーケストレイターが別なので、少しクセが違う印象。
 コメントでハンス・ジマーは「私はこれほど上手くアクションスコアを書けない」とニューマンのスコアを持ち上げ、ゴールドスミスを「映画を観て笑ってしまうほど愛国主義的」などとけなしているが、正直言ってニューマンのスコアは古めかしく聞こえる。そこで思い出すのが、この後にまたもリジェクトが問題となった同監督の『トロイ』だ。あれも古いタイプのヤーレのスコアがリジェクトされた。ペーターゼンはそういう音が好きなのかもしれない。

13ウォーリアーズ(1999)
 /グレアム・レヴェル→ジェリー・ゴールドスミス

 マイケル・クライトンの小説『北人伝説』をジョン・マクティアナン監督がアントニオ・バンデラス主演で映画化した中世を舞台にしたアクション作。バグダッドからヴァイキングと共に北欧まで旅をし、得体の知れない敵と戦うはめになるアラブ人の物語。
 レヴェルはアラブと北欧という文化を表す民族楽器、リサ・ジェラードのヴォーカルを使った得意の民族的なスコアを書いた。しかし、製作者でもあるクライトンは映画そのものの出来映えが気に入らず、もっと観客に受けるように作り直すことにした(物語的にアクションシーンが少ない上に後半に集中しているのもバランスが悪い)。すでに次の仕事(『華麗なる賭け』のリメイクである『トーマス・クラウン・アフェアー』)に入っていたマクティアナンの代わりに、自分で再編集し、30分近くをカットして新たに撮り直すことにした。音楽については長年の友人でもあるゴールドスミスを呼ぶことにした。ふたつのスコアは民族色こそ共通しているが、方向性はまったく異なっていた。レヴェルはアクションスコアですら控えめで、明確なモチーフは使わなかった。ゴールドスミスははっきりとしたモチーフで全体を統一させ、アクションシーンはドラマティックに盛り上げた。これはクライトンの意図どおりだったが、クライマックスシーンのスコア約半分が使用されずに無音になったのは残念(サントラには収録)。

キッド(2000)
 /ジェリー・ゴールドスミス→マーク・シェイマン

 ジョン・タートルトーブ監督、ブルース・ウィリス主演のドラマ。優秀なコンサルタントがある日、子供の頃の自分と出会って、自分を見つめ直す。ディズニー映画。
 ゴールドスミスはドラマのシリアスな部分に重点を置いて作曲することにし、ギタリストのジョン・ウィリアムズを使ったアコースティックギターの音色をキーにしたメインテーマを作った。シンセでモックアップを作り、それを監督に聴いてもらいながら作曲を続けた。監督は編集をしながら音楽を当てはめ、そこで初めて望んだ方向性ではないと気づき、もっとファミリー路線の音楽を望んでシェイマンに交代させた。
 ゴールドスミスは後にこのテーマを『タイムライン』で愛のテーマとして使うことになるが……。

ドメスティック・フィアー(2001)
 /ジェリー・ゴールドスミス→マーク・マンシーナ

 ハロルド・ベッカー監督、ジョン・トラヴォルタ主演のサスペンス。
 監督は過去に2作(『冷たい月を抱く女』と『決別の街』)で組んでいるゴールドスミスに依頼した。しかし、ゴールドスミスのスコアはテーマがはっきりしすぎているという理由で嫌われ、すべて作曲し終える前に交代を告げられた。代わったマンシーナのスコアはいかにもサスペンスの雰囲気重視のスコアになった。

Timelinebtタイムライン(2003)
 /ジェリー・ゴールドスミス→ブライアン・タイラー

 マイケル・クライトンの原作をリチャード・ドナー監督で映画化。
 クライトンはゴールドスミスと長年の付きあいがある上、ドナーとゴールドスミスは『オーメン』で組んで、オスカーを手にしただけに、これはドリームチームであるはずだった。
 ゴールドスミスはドナーと打ち合わせをし、7ヶ月近くかけてすべての音楽を作曲し、録音を終えた。ドナーも出来映えに満足だった。しかし、映画の方は公開前の試写で否定的な評価を受けてしまい、追加撮影と再編集が行われることになった。その結果、音楽があわなくなる個所が出てきた。最も大きかったのがオープニングシーンで、まったく別になってしまう。ついにドナーは音楽をやり直す決定をした。ゴールドスミスにそれを伝えたが、ドナーにとっては望むようなスコアがあるのに変更しなければいけないという葛藤があり、ゴールドスミスもドナーへの友情があり、出来ることなら書き直したいが、これ以上のものはできないという煩悶があり、最終的に降板が決まった。
 その後、再編集済みのフィルムにテンプトラックがつけられたが、それの多くがタイラーのものだったということで、タイラーに依頼がいく。タイラーはゴールドスミスのスコアを聞くことなく、作曲に入る。
Timelinejg ゴールドスミスのスコアはVARESE SARABANDEからSACDハイブリッドでリリースされた。
 ふたりのスコアはメインテーマ+愛のテーマを基調にしており、構造は似ているが、タイラーの方が現代的なシンセ打ち込みやループを使用していることと、モチーフの数が多いことが大きな違い。

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