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2012年6月17日 (日)

リジェクトスコア 9

 2000年代の有名作品その1。

トゥームレイダー(2001)
 /グレッグ・ホール・ジョーンズ→マイケル・ケイメン→グレアム・レヴェル

 ビデオゲームシリーズの映画化。サイモン・ウェスト監督、アンジェリーナ・ジョリー主演のアクション作。
 大量のロックが挿入されることがわかっていたため、監督はスコアとロックのバランスが取れる作曲家を探し、ジョーンズを起用した。MTVロゴなどを作曲し、『将軍の娘/エリザベス・キャンベル』でアカペラのアレンジを任せた経験を買ったのだ。ジョーンズはロシア民謡やパーカッションを使った45分のスコアを書き上げた。しかし、その間に製作総指揮のスチュアート・ベアードはほぼ実績のないジョーンズではなく、ケイメンの起用を決めていた。ケイメンは幾つかデモを作ったが反応がない。さらに数曲作ったところ、否定的な反応が返ってきた。過去の苦い経験は繰り返したくないと、ケイメンはその段階で降板する。代わって起用されたのがレヴェルだった。公開が迫っており、早く仕上げる必要があったため、レヴェルは10日間でLAで書き、同時にロンドンで録音して、ネットでデータを送ってもらい、LAでミキシングをするという態勢になった。発売日の迫るサントラの作業も同時に行わなければならなかったため作業は混乱し、サントラは編集ミス、ミキシングミス、曲名のスペルミスなど多くのミスが生じ、レヴェルは公式に謝罪している。
 ちなみに2003年の続編でもリジェクトが起こった。初期ではクレイグ・アームストロングが45分のスコアを書いているが、アラン・シルヴェストリに代わっている。アームストロングのスコアは1個所だけ、ラボのシーンで使われている。

エネミー・ライン(2001)
 /ポール・ハスリンガー→ドン・デイヴィス

 ジョン・ムーア監督、オーウェン・ウィルソン、ジム・ハックマン主演のアクション。敵地の真っ直中に不時着したパイロットが国境まで必死の逃亡を図る。
 初期のヴァージョンでは内線で分断されたボスニアが舞台だけに映画はもっとダークで、シリアスなものだった。ハスリンガーはシンセとオケでダークな雰囲気を表現し、東欧の雰囲気を出すためにデュデュクなど民族楽器も導入した。しかし、その間に製作者はもっとアクションを入れたものに再編集しており、墓場や戦士の死などのイメージをカット(ディレクターズ・カットでは多くが復活)していた。おかげでダークなイメージはあわなくなり、音楽も差し替えられることに。デイヴィスはスタジオの要望どおり、もっとアクション映画っぽいスコアを書き上げた。
 どちらのスコアも正規リリースされていない。デイヴィスのスコアはアカデミープロモとしてのみ存在している。

テキサス・レンジャーズ(2001)
 /マルコ・ベルトラミ→トレヴァー・ラビン

 スティーヴ・マイナー監督の西部劇。南北戦争後、若者たちが西部の治安を守るためにレンジャー部隊を結成する。
 ベルトラミは伝統的な西部劇スコアと現代的なオーケストレイションの融合を目指し、ハーモニカとトランペットソロ、部分的に"DIES IRAE"を引用した。しかし、テスト試写でターゲットである若者層から音楽が古くさいという感想を持たれ、製作者は音楽の差し替えを決める。若者層に受けるロックテイストのスコアを負かされたのはラビン。しかし、結局、映画は興行的に失敗してしまう。不人気の西部劇、しかも『ヤングガン』のような若手スターも不在の映画を若者に見せようとして失敗するのは当たり前である。
 どちらのスコアも正規リリースされていないが、ベルトラミのスコアは充分に現代的で聴き応えがある。ただ、メインテーマがわかりやすすぎて安っぽく感じられるかも。ラビンのスコアは『タイタンズを忘れない』などに通じるテイスト。両方あわせたアルバムが出ればおもしろいと思うが、映画自体の評価が悪いから無理だろうな。

ボーン・アイデンティティー(2002)
 /カーター・バーウェル→ジョン・パウエル

 ロバート・ラドラムの小説『暗殺者』を映画化。ダグ・リーマン監督、マット・デイモン主演。記憶をなくした男が自分の正体を探り始めると組織に命を狙われる。
 バーウェルは監督と音楽的な意思の疎通がほとんどない状態で作曲に入った。シンセをメインにしたパーカッシヴなスコアを作曲し、デモを作り、1/3ほど録音を終えたところで、自宅のあるニューヨークに一時戻る。その時、911のテロが起こった。ハリウッドにも影響は及び、映画の製作が止まったり、修正を余儀なくされたりする。本作も半年間公開が延びることになった。バーウェルは残りの録音を終える必要があったが、自宅の妻が離れないで欲しいと懇願したため、断念する。代わりに起用されたパウエルはバーウェルと同じアプローチをすることになった。そして、トリロジーすべてを担当することになる。

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