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2012年6月14日 (木)

リジェクトスコア 8

 90年代の有名作品その2。

Last_man_standingラストマン・スタンディング(1996)
 /エルマー・バーンスティーン→ライ・クーダー

 ウォルター・ヒル監督、ブルース・ウィリス主演で、黒澤明の『用心棒』を1930年代のアメリカを舞台にしてギャング映画として仕上げた。
 バーンスティーンは久しぶりに西部劇スコアが書けると張り切った。最初と最後に主人公のモチーフを配置し、パーカッションを効かしたワイルドなアクションスコアを書き上げた。スタジオ側は気に入ったが、ヒルは伝統的すぎ、オールドファッションすぎると感じ、もっと違うものを求め、クーダーに変更した。クーダーのスコアはギターやパーカッション、シンセによるブルーズのフレーヴァーを加えたものになっている。
 バーンスティーンのスコアはVARESE SARABANDEからリリースされている。

ローズウッド(1996)
 /ウィントン・マルサリス→ジョン・ウィリアムズ

 ジョン・シングルトン監督による黒人差別事件の実話の映画化。題材のせいもあって日本では劇場未公開。1932年、アメリカの小さな町ローズウッドで些細なきっかけから白人住人が黒人住人を殺害、リンチ、放火し、町は消滅した。しかし、この事件は80年代になるまでメディアには出なかった。ジョン・ヴォイトが黒人を逃がす白人役をしている。
 シングルトンは同じく黒人のトランペッター、マルサリスに依頼。マルサリスは時代背景に相応しいオールドスタイルのジャズにブルーズとフォークミュージックを加えたスコアを書き、自身でも演奏した。しかし、シングルトンはそのスコアに満足しなかった。そこでウィリアムズに依頼する。ウィリアムズは60年代にゴスペルシンガーのアレンジ・オーケストレイションをやっていたのである。ウィリアムズのスコアはゴスペル、ギター、フィドル、ハーモニカ、口琴などを使った独特なスコアになり、その後、『アミスタッド』につながっていく。
 シングルトンはマルサリスのスコアの権利を自由にし(通常ボツスコアの権利はスタジオが保有)、マルサリスはそのスコアを元にアルバムREELTIMEとしてリリースした。

Breakdownブレーキダウン(1997)
 /ベイジル・ポルデュリス、リチャード・マーヴィン

『U-571』のジョナサン・モストウ監督、カート・ラッセル主演の「田舎に行ったら怖い目にあった」パターンのサスペンス。
 LA-LA LANDからすべてのスコアを収録したサントラがリリースされているので、詳細はそちらを参照→ブログ
 で、TORN MUSICによれば、若干順番が違っていて、友人のマーヴィン→プロデューサーのラウレンティスがポルデュリス推し→ポルデュリス1→ポルデュリス2→さらにクライマックスのスコア修正→ポルデュリスは別の仕事→マーヴィン→ポルデュリス2を中心にスコアを選択、という流れだったようだ。

モンタナの風に抱かれて(1998)
 /ジョン・バリー→トーマス・ニューマン

 ニコラス・エヴァンスのベストセラー小説をロバート・レッドフォード監督・主演で映画化。心に傷を負った馬と盲目の少女の交流。それを巡る人々のドラマ。
 バリーのスコアは自然の描写や馬に乗って走る感覚は素晴らしかったが、内面のダークな部分が物足りなかった。監督は別の音楽的アプローチを望んだ。しかし、この時期のバリーは頑固で、自らの音楽的アプローチを変えなかった。同じ年の『マーキュリー・ライジング』でも主張を変えなかったため、アクションシーンの大部分はカーター・バーウェルが追加曲を書き下ろしている。結局、監督はテンプトラックとして使っていた『ショーシャンクの空に』のニューマンに依頼した。
 バリーのスコアは彼のオリジナルアルバムBEYONDNESS OF THINGSに使われていると言われている。

アベンジャーズ(1998)
 /マイケル・ケイメン→ジョエル・マクニーリー

 アメコミではなくてイギリスのTVシリーズ『おしゃれ探偵』の映画化。ジェレマイア・チェチック監督、レイフ・ファインズ、ユマ・サーマン、ショーン・コネリーなど有名俳優をそろえたが歴史的な失敗作となった。
 ケイメンはTVシリーズのローリー・ジョンソンによるメインテーマを今風にアレンジして録音したが、劇中にあまり繰り返し使うのを嫌がった。未完成のフィルムに未完成のスコアを当てはめたテスト試写で否定的な反応があったため、製作者たちは慌てて再編集し、2時間の映画を90分にし、スコアを入れ替えることにした。そのため、ケイメンはカーネギーホールでのコンサートをすべてキャンセルし、作曲し直すことになった。しかし、それも受け入れられず、『リーサル・ウェポン4』のスケジュールがあるためについにケイメンは降板。代わりに製作者ジェリー・ワイントローブが以前『ソルジャー』で起用したマクニーリーが選ばれた。映画は散々だったが、マクニーリーのスコアは好評価を得ている。

奇蹟の輝き(1998)
 /エンニオ・モリコーネ→マイケル・ケイメン

『エイリアン3』の原案などのヴィンセント・ウォード監督、リチャード・マシスン原作の映画化。ロビン・ウィリアムズ主演で事故死した主人公が自殺した妻を救うため天国から地獄へと旅をする。
 モリコーネはお馴染みのエッダ・デルオルソの女性ヴォーカルを入れた宗教的なスコアを書く。しかし、その間、映画は変化し続けていた。重要なシーンはスコアとあわなくなり、宗教的すぎて製作者たちはリジェクトを決める。モリコーネはショックを受け、LAでのセミナーでは「製作者たちは自分に二度目のチャンスを与えるべきだった」とぶちまけた。
 ケイメンはかつての自分のバンドNEW YORK ROCK& ROLL EMSENBLEでマーク・スノウと共作した曲"BESIDE YOU"のメロディを使うことにした。彼の妻が映画を観て提案したという。

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コメント

『奇蹟の輝き』は最初、監督の意向でWojciech Kilar に打診し、打ち合わせをして、いくつか見本音楽を作ったものの、地味だということで切られて、テンプミュージックに使っていたモリコーネに話が行ったはずです。モリコーネが最後に「クズ映画を、音楽でごまかそうったってうまくいくもんか」と言ったようですね(笑)。

投稿: 尾之上浩司 | 2012年6月17日 (日) 12:43

キラールの話は本にも海外サイトにもありませんでした。モリコーネの言うとおりですけど、だったら引き受けるなと(^_^;)

投稿: SOW | 2012年6月17日 (日) 13:46

 当時、原作の翻訳をやっていたので映画情報を英米の雑誌で追っていて、出てきた話です。ただ、当時はまだネットがいまの形になってませんでした。
 一部、勘違いしているみたいですが(地味と派手)こういう情報を憶えていた人がいるようですね。
http://cache.yahoofs.jp/search/cache?c=5Sz5WPXMrWcJ&p=Wojciech+Kilar%2Cwhat+dreams+may+come%2Cmusic&u=www.amazon.ca%2FWhat-Dreams-Come-Michael-Kamen%2Fdp%2FB00000DG3G

 モリコーネはこれにかなりチャレンジ精神を燃やしていて、独自の処理をしてみせたかったんでしょうけれどねえ。

投稿: 尾之上浩司 | 2012年6月20日 (水) 10:54

なるほどー。
モリコーネのスコアは聴いたことがあるのですが、エッダの声が入った他のイタリア映画とあまり変わりがなかったような……(^_^;)

投稿: SOW | 2012年6月20日 (水) 11:07

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