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2012年6月11日 (月)

リジェクトスコア 7

 今回は90年代の有名作品その1。

Whitefang_2ホワイト・ファング(1991)
 /ベイジル・ポルデュリス、ハンス・ジマー

 アラスカの金鉱を目指して旅する少年と狼の血が入った犬の物語。ディズニー映画。
 ランダル・クライザー監督は『青い珊瑚礁』でも組んだUSCからの盟友ポルデュリスに音楽を依頼した。ポルデュリスは物語に沿って前半をエスキモーのチャントなどを入れた静かなスコアにし、後半をアドヴェンチャースコアにしようとして、順に作曲・録音していった。しかし、前半を観たディズニーのジェフリー・カッツェンバーグ(現在はドリームワークス)は全部がこうなるのかと不安になり、ジマーに依頼する。ジマーはシャーリー・ウォーカー(オーケストレイションと指揮で当時よく組んでいた)とフィアクラ・トレンチ(ジマーの師匠スタンリー・メイヤーの協力者)と共にスコアを書き始める。一方、ポルデュリスも後半に取りかかっていた。最終的にふたつのスコアを提示されたクレイザーは丸く収めるつもりだったのか、いいとこ取りをすることに。結果、8割がポルデュリス、14%がジマー、3.6%がトレンチ、1.2%がウォーカーという割合に。
 INTRADAからどちらのスコアも収録したサントラがリリースされたので、そちらの詳細は記事を参照→ブログ

心の旅(1991)
 /ジョルジュ・ドルリュー→ハンス・ジマー

 マイク・ニコルズ監督、ハリソン・フォード、アネット・ベニング主演のドラマ。仕事一徹のエリート弁護士が記憶を失い、再生するまでを描く。
 ニコルズとドルリューは『イルカの日』などで3回組んでいる。ドルリューはこの物語の悲劇的な側面にウェイトを置き、悲しげなヴァイオリンソロをメインにスコアを組み立てた。しかし、スタジオはこのアプローチに満足せず、コメディとドラマのバランスを取った現代的なスコアを求め、ジマーに依頼した。
 ドルリューのスコアは先に書いたように『何かが道をやって来る』とのカップリングでフランス・ユニバーサルからリリースされた。

K2/ハロルドとテイラー(191)
 /ハンス・ジマー→チャズ・ジャンケル

 K2に挑む二人組を描いた登山ドラマ。マイケル・ビーン主演、藤岡弘、も出演。
 これはかなり複雑な国別の違い。監督は最初ピーター・ガブリエルに依頼したかったが、果たせず、友人であるイギリスのバンドTHE BLOCKHEADSのメンバーだったジャンケルに依頼。ジャンケルがすべて終えて数ヶ月後、ジャンケルの元に映画が再編集になり、プロデューサーが音楽が嫌いなので変えると連絡が入った。そこで入れられたのがジマーの音楽。しかし、さらに数ヶ月後、プロデューサーがジマーの音楽も気にくわないということになり……結局、スケジュールの関係で欧州ではジマーのスコアが使われ、アメリカのビデオ発売ではジャンケルのスコアが大半(ジマーが少し入った)という状態になった。
 サントラはVARESE SARABANDEからジマー版のみリリースされている。ジャケットが2種類あり、ジャンプしている人物写真版が先に出て、後からこちらのマシュー・ピークのイラスト版が出た。しかし、このスコアはアメリカのビデオには使われていないことになる。

リバー・ランズ・スルー・イット(1992)
 /エルマー・バーンスティーン→マーク・アイシャム

 ロバート・レッドフォード監督、ブラッド・ピット出演のドラマ。フライ・フィッシングでつながる兄弟を描く。
 レッドフォードはバーンスティーンを起用したが、二人の間にはこの映画に対する考え方の違いがあった。バーンスティーンは極めて詩的な作品で、アメリカーナのようなリリカルな音楽が必要だと考えたが、監督はもっと現実的な物語だと考えていた。そこでアイシャムを起用し、テンプトラックを使って要望を伝えた。アイシャムはその中から最終的にケルト的なものが必要だと判断し、数曲のケルティックなテーマを作り、その中のひとつをメインテーマとした。アイシャムのスコアはアカデミー作曲賞にノミネートされている。

アサシン(1993)
 /ゲイリー・チャン→ハンス・ジマー

 リュック・ベッソン監督の『ニキータ』のアメリカ版リメイク。ジョン・バダム監督、ブリジット・フォンダ主演。
 監督は既製曲と、ニナ・シモンズのジャズナンバーと影響し合うスコアを意図して、『バード・オン・ワイアー』で組んだジマーを起用したいと思っていた。しかし、スケジュールがバッティングし、スタジオが『沈黙の戦艦』を担当したゲイリー・チャンを起用する。チャンは数週間かけて全体のシンセデモを作り、数曲をオケで録音していた。しかし、スタジオはそのスコアのメロディが不満で、しかも、シモーネの歌とフィットしないと判断した。その時にはジマーは少し時間が取れるようになっており、スタジオはジマーにテーマを幾つか書いてもらい、それを元にチャンにスコアを書いてもらうことにする。しかし、チャンはそれを拒む。結局、ジマーがすべてやることに。
 なお、同じ年にチャンが担当した『山猫は眠らない』は完成後にヴァイオレンスシーンがカットされ、そのためにジマーとマーク・マンシーナが変更した部分を担当することになった。

インタビュー・ウィズ・バンパイア(1994)
 /ジョージ・フェントン→エリオット・ゴールデンサール

 アン・ライスの原作をニール・ジョーダン監督、トム・クルーズ主演で映画化。
 監督は『狼の血族』などで組んだフェントンに依頼した。フェントンのスコアはダークでヴァンパイアの悲劇性を表現しており、さらにヘンデルやハイドンなどのクラシック曲も使用したものだった。しかし、プロデューサーはスローすぎて物足りないと感じ、ゴールデンサールに依頼した。その頃、フェントンはまだ録音を続けており、同じスタジオで午前はフェントン、午後はゴールデンサールと、ほとんど同時に録音することもあった。ゴールデンサールのスコアはバロックからロックまでを混ぜたようなスタイルで、アカデミー作曲賞にもノミネートされ、監督とはその後も組むことになる。
 フェントンのスコアはその後、組曲"THE VAMPIRE"として編曲され、ロイヤル・フィルで演奏されている。これが海賊盤の音源のようだ。PART 1PART 2

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