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2012年6月 3日 (日)

リジェクトスコア 4

 前回に続いてホーナーその2。

Nattyナティ物語(1985)
 /エルマー・バーンスティーン→ジェイムズ・ホーナー

 ディズニーのファミリー物。1935年のアメリカ、シカゴからワシントンまで父親を探して一人旅をする少女の苦難、初恋を描く。
 バーンスティーンは雄大な自然をイメージしたいかにもアメリカーナなスコアを書いたが、ディズニーはもっとキャラクターの冒険に焦点を絞ったスコアにするように要求。息子ピーターの手も借りて何度も書き直したが、結局リジェクトされてしまった。ホーナーはメインテーマは同じようなアメリカーナを書いたが、いつものアクション色も加えたスコアを書き、認められた。
 バーンスティーンのスコアはVARESE SARABANDEがリリースした彼のリジェクトスコア集の中に収録されており、ホーナーのスコアもINTRADAから単独でリリースされた。残念ながら、ホーナーの方は完売。

ヤング・ガン(1998)
 /ジェイムズ・ホーナー→アンソニー・マリネリ

 エミリオ・エステヴェス、キーファー・サザーランド、ルー・ダイアモンド・フィリップス、チャーリー・シーンがビリー・ザ・キッドと仲間たちを演じた青春西部劇。続編も製作された。
 クリストファー・ケイン監督とホーナーは『エメラルド・レジェンド/少年とイルカの愛の伝説』で組んでおり、2度目だった。ホーナーはINCANTATIONのメンバーやエスニック楽器を使ったアイリッシュテイストのスコアを書いたが、スタジオは伝統的な西部劇音楽でないことを不満に感じ、リジェクト。代わりにマリネリを起用。こちらもノイズやシンセを多用した西部劇っぽくないスコアだったが、若手人気男優たちの支持層には受けると判断された。
 どちらのスコアも正規ではリリースされていないが、ホーナーのスコアの一部分はエスニックミュージックグループ、INCANTATIONのアルバムCamera-Reflections on Film Musicに収録されている。このアルバムはINCANTATIONがこれまで参加した映画音楽(タイタニック、ブレイブハート、ミッションなど)から彼らの担当分が収録されている。

身代金(1996)
 /ハワード・ショア→ジェイムズ・ホーナー

 ロン・ハワード監督、メル・ギブソン主演のサスペンス。
 ショアは監督と良好な関係を築き、かなりのめり込んで仕事をしていた。通常より多いミュージシャンを使い、ダークでコンテンポラリーなスコアを録音した。が、理由はわからないがリジェクト。ショアが言うには、コンテンポラリーすぎたのかも。そして、監督は神経質になっているようだったと。恐らく、予想したよりも上手くはまらなかったのか、上からの命令というところだろう。代わりの作曲家は『コクーン』など何度も組んでいるホーナー。このスコアも実はダークでコンテンポラリーだったのだが、最大の違いはハッピーエンドに向かっていくのを期待させる雰囲気の有無だった。

トロイ(2004)
 /ガブリエル・ヤーレ→ジェイムズ・ホーナー

 ヴォルフガング・ペーターゼン監督によるトロイ戦争の映画化。
 ヤーレは1998年に『レ・ミゼラブル』を担当したが、結局リジェクトを食らっていた(ベイジル・ポルデュリスが担当)。そのため、同じような史劇の本作で自分の別の才能が示せると意欲的だった。監督とヤーレは充分な打ち合わせをして音楽を造り上げていったが、テスト試写で「音楽が高圧的すぎ、大時代的」と批判されたことで、監督は一転してリジェクトすることに。まず、ジョン・デブニーに打診したが、別の仕事の締切が迫っており断念。次にオファーしたのが『パーフェクト・ストーム』で組んだホーナーだった。受けたのはいいが、公開まで時間が迫っており、録音・編集などを考慮すると作曲にかけられる時間は9日。作曲するべきは3時間近いスコア。そこで、ヤーレが使った女声コーラスやソリスト、それにアイディアを使うことで時間をはぶくことにした。完成したスコアは時間がなかったわりには力作だった。
 ヤーレのスコアは仕打ちに憤慨したヤーレが自分のサイトで主立ったシーンのスコアを聴けるようにしたが、しばらくしてスタジオから公開禁止(リジェクトスコアでも所有権はスタジオにある)の命令を食らっている。確かに大時代的ではあるが、史劇なんだからこれでもいいのではないかとも思う。それくらいの気合いの入ったスコアだった。
 映画本編は30分長くなったディレクターズカット版DVDが発売されたが、尺が代わったために音楽も付け替えられ、ホーナーのスコアがカットされたりループさせられたりしただけでなく、テンプトラックとしてつけられていた他の映画音楽(スターシップ・トゥルーパーズ/ベイジル・ポルデュリス、猿の惑星/ダニー・エルフマン、モンテ・クリスト伯/エドワード・シェアマー)がそのまま使われ、さらにはヤーレのスコアも2個所で使われているという、複雑な代物になっている。

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コメント

ヤーレのトロイぜひ聞きたいですね。スコアは調べた限りでは販売されてませんでしたが、今後リリースに期待したいです。

投稿: kazu | 2012年6月 3日 (日) 14:54

劇場公開時にホーナーのサントラが発売された際も当サイトにて(アイデアを流用された)G・ヤーレが可哀想だという情報を読んだ記憶がありましたが、0年代ではジェームス・ホーナーのベスト3に入る愛聴盤(他は『アバター』『ビューティフル・マインド』)です。

投稿: | 2012年6月 4日 (月) 04:11

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