« ディヴァイド | トップページ | QUARTETの新譜2012/06/06 »

2012年6月 5日 (火)

リジェクトスコア 5

 今回は80年代の有名作品その1。

フラッシュ・ゴードン(1980)
 /QUEEN&ポール・バックマスター→ハワード・ブレイク

 ディノ・デ・ラウレンティス製作によるスペオペの元祖の絢爛豪華な映画化。
 イギリスのロックバンドQUEENの起用を決めたラウレンティスだが、QUEENにはオーケストラスコアを書く能力がなかった。そこでQUEENの曲をモチーフにしてオーケストラアレンジするためにバックマスターが雇われる。しかし、ロイヤル・フィルのスケジュールを押さえたにもかかわらず、バックマスターはまだ1分しか仕上げていなかった。ラウレンティスはリドリー・スコットの映画監督デビュー作『デュエリスト/決闘者』を担当したブレイクと話をする。1週間以内に書いてくれというラウレンティスに、ブレイクは3週間か1ヶ月必要だと答える。すると、ラウレンティスは「もっと金を出す!」 それで3週間で書き上げることに。全体のスコアを書いたが、最終的には、QUEENの部分が35分、ブレイクのスコアが20分以下、QUEENのモチーフをブレイクがアレンジした部分が十数分となった。
 ブレイクのスコアはSUPERTRAXからプロモ盤として限定リリースされたが、すでに完売。ベストセラーとなったQUEENのアルバムは昨年、別ヴァージョンが追加されたデラックス・エディションが発売になっている。

ハンター(1980)
 /ミシェル・ルグラン→チャールズ・バーンスティーン

 実在の賞金稼ぎを描いたスティーヴ・マックイーンの遺作。
 バズ・キューリック監督はルグランにオペラティックなスコアを要求し、アクション映画らしからぬスタイルで完成させた。しかし、スタジオ側は現代的なシカゴの犯罪映画には相応しくないと考え、バーンスティーンに『フレンチ・コネクション』のようなモダンジャズスコアを書かせた。しかし、監督は簡単に妥協せず、アメリカ公開版ではアクションシーンをバーンスティーン、他をルグランで使い分けることにした。他の地域ではスタジオの意向を汲んだバーンスティーンで統一している。バーンスティーンのスコアは未発売だが、ルグランは『栄光のルマン』とのカップリングでサントラがリリースされた。

Clashtitansタイタンの戦い(1981)
 /ジョン・バリー→ローレンス・ローゼンタール

 リメイクもされたハリーハウゼンのダイナメーション最後の大作。
 ハリーハウゼンは『冬のライオン』のようなスコアを求めてバリーに依頼したが、上手くはまらなかった。そこでローゼンタールに依頼することに。思うに、バリーのスコアは真面目で外連味が足りなかったのではないか。
 ローゼンタールのスコアは現在、2枚組完全盤サントラがリリースされている。

Author喝采の陰で(1982)
 /ジョニー・マンデル→デイヴ・グルーシン

 アーサー・ヒラー監督による、原題の"AUTHOR,!AUTHOR!"からして『クレイマー、クレイマー』を意識しまくったアル・パチーノの父子物語。
 詳細不明だが、マンデルのスコアはシリアスタッチなので、そこで意見の相違があったのだろう。
 VARESE SARABANDEから限定盤がリリースされており、ここには使用されたグルーシンとボツになったマンデル、両方のスコアが収録されている。

20102010(1984)
 /トニー・バンクス→デイヴィッド・シャイア

『2001年宇宙の旅』の続編というよりも、アーサー・C・クラークの原作の映画化。
 だいたい、前作からしてキューブリックはアレックス・ノースに音楽を頼んでおきながら、テンプトラックとしてつけていたクラシック曲に似せるように要求し、結果的にそのテンプトラックをそのまま使うというリジェクトの代表例となっている。続編までこうなるとは。
 ピーター・ハイアムズ監督は『ザ・シャウト/さまよえる幻響』を見て、音楽を担当したプログレバンドGENESISのキーボーディスト、バンクスに依頼してきた。いくつか曲を作ってテープを渡したが、ハイアムズは納得しない。6ヶ月作業を続けたが、結局リジェクト。ハイアムズは休暇中だったシャイアにコンタクトし、シンセスコアを要求する。シャイアはクレイグ・ハクスリーと共同で作曲した。
 バンクスは自分が書き上げた曲を作り直して、ロンドン・フィルで録音している。"Seven: Suite for Orchestra"というアルバムのTHE GATEWAYという曲がそれである。

|

« ディヴァイド | トップページ | QUARTETの新譜2012/06/06 »

リジェクト」カテゴリの記事

コメント

『フラッシュ・ゴードン』のハワード・ブレークのスコアが、彼の作品としては少し練り込み不足と感じた理由がこれではっきりしました!急ぎ仕事だったのですね。ナショナル・フィルを使ったりと、豪華な音楽ではありましたが。でも彼自身も、リドリー・スコット監督の『エイリアン』(‘79)の時には、監督から作曲依頼があったのに、製作会社サイドの「ビッグ・ネームを使え」との圧力で干されているのだから、全く予想の付かない業界ですね。スコット監督がゴールドスミスを邪険に扱ったのも、旧知のハワード・ブレークとの親交を邪魔された腹いせ!?(邪推ですかね?)

投稿: たかし | 2012年6月 5日 (火) 20:46

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/73118/54849616

この記事へのトラックバック一覧です: リジェクトスコア 5:

« ディヴァイド | トップページ | QUARTETの新譜2012/06/06 »