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2012年6月 8日 (金)

リジェクトスコア 6

 80年代の有名作品その2。

Goldenchildゴールデン・チャイルド(1986)
 /ジョン・バリー→ミシェル・コロンビエ

 エディ・マーフィー主演のオカルトアクション。
 これは製作現場が混乱したために音楽がとばっちりを受けてしまった例といえる。
 LA-LA LANDからどちらのスコアも収録したサントラがリリースされたので、詳細についてはそちらの記事を参照→ブログ


プラトーン(1986)
 /ジョルジュ・ドルリュー→サミュエル・バーバー

 オリバー・ストーン監督のベトナム戦争物。
 これはテンプトラックとして使われたクラシック作品に監督が固執した例。ドルリューはスコア7曲を書いたが、ストーンはバーバーの"Adagio For Strings"に出来るだけ近づけろと要求し、結果的にそのまま使用することを選択した。しかも、ドルリューの指揮での録音。映画に使用されたドルリューのスコアは1曲のみだった。
 サントラにはバーバーの他は当時のロックなどが収録されただけ。後にストーン/ドルリューの『サルバドール』とのカップリングで、7曲のスコアすべて収録したサントラがPROMETHEUSからリリースされた。

Prayerfordying死にゆく者への祈り(1987)
 /ジョン・スコット→ビル・コンティ

 ジャック・ヒギンズの原作をマイク・ホッジス監督がミッキー・ローク主演で映画化。殺しを見られたIRAのテロリストが神父に懺悔して秘密を封印するが……。
 1971年の『アントニーとクレオパトラ』でスペインの作曲家アウグスト・アルグエロJr.を製作のピーター・スネルが起用したが、主演のチャールトン・ヘストンがそのスコアを気に入らず、ジョン・スコットが起用された。スコットとスネルは良好な関係を続け、スネルは本作の音楽もスコットを起用。小編成のストリングスにパーカッションとロックテイストのギターを加えるという非常に現代的なもので、IRAを意識したアイリッシュ色はハープの使用のみだった。さらにはエンドクレジット用に歌も製作する。こうして順調に進んだスコアだが、イギリス・アメリカの製作者がいたことが問題となった。ハリウッド側の製作サミュエル・ゴールドウィンJr.はアクションをもっと入れようと、編集を何度もやり直した。そして、音楽もハリウッド的にしようと、コンティに差し替える。フィドルなどアイリッシュ色を多く取り入れ、オーケストラとシンセを組み合わせたスコアとなった。しかし、批評ではアイリッシュ色がチープすぎると批判される結果となっている。
 この残念な結果にもかかわらず、スネルとスコットの関係はその後も良好に続き、最新作"THE WICKER TREE"でも起用している。
 スコットのスコアは自身のレーベルJOSから『ウィンター・ピープル』とのカップリングでアルバムがリリースされている。『ウィンター・ピープル』はテッド・コッチェフ監督、カート・ラッセル、ケリー・マクギリス主演のドラマで、スコアも素晴らしいので、このアルバムはお薦め。コンティのスコアは正規リリースされていない。

2014年9月追記:コンティのスコアがQUARTETからリリースされた→ブログ記事

ヘルレイザー(1987)
 /COIL→クリストファー・ヤング

 クライヴ・バーカー原作・監督のホラー。ピンヘッドなどの異形のキャラが人気となりシリーズ化された。
 製作の初期段階ではデレク・ジャーマン監督の『エンジェリック・カンヴァセーション』を担当していたイギリスのバンドCOILと監督が綿密な打ち合わせをしていた。しかし、撮影済みのフッテージを見たハリウッドの製作者が10倍の予算をつけるという申し出にバーカーが応じ、音楽もCOILの「典型的なホラースコアではないスコア」ではなく、ホラーらしいスコアに変更せざるを得なくなった。ヤングのスコアはゴシック調でホラーファンからは熱狂的な支持を受ける。
 COILのスコアはその後、彼らのアルバムに収録され、現在ではUnnatural History IIに収録されている。

Bigblueグラン・ブルー(1988)
 /エリック・セラ→ビル・コンティ

 リュック・ベッソン監督の素潜り映画。
 これは国による事情がからんだ例。
 ヨーロッパでのヒットを受けて、アメリカ配給を考えた製作者ジェリー・ワイントローブだが、上映時間が長すぎたのでカットし、レイティングをPGにするためにヌードと暴力的なシーンをカットした。さらに、あのラストがアメリカでは受けないと判断し、再編集でハッピーエンドにし、音楽を差し替えることにした。そこで『ベストキッド』で起用したコンティを呼び、はっきりとしたメインテーマを要求した。
 皮肉なことにコンティのサントラは発売されず、アメリカでもサントラとして店頭に並んだのはセラのスコアで、これがよく売れた。

Accidentaltourist偶然の旅行者(1988)
 /ブルース・ブロートン→ジョン・ウィリアムズ

 ローレンス・カスダン監督がアン・タイラーのベストセラー小説を映画化した恋愛ドラマ。 
 カスダンはすでに『シルバラード』などで組んでいたブロートンにバッハの曲をアレンジして使いたいと持ちかけ、ブロートンは曲の選定をやり始めた。それは難航し、試しに何曲かバッハを録音しただけで、ふたりは創作上の相違で離れることになった。

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コメント

『ライト・スタッフ』では前任者が降板したためにビル・コンティにお鉢が回ってきたと聞いたことがあります。
本当なんでしょうかね?
もしそうならテンプ・トラックを流用しまくったあの内容も、少しは納得できるのですが。

投稿: 椰子 | 2012年8月 6日 (月) 00:04

前任者の話は聞いたことがありませんが、製作の最終段階での参加になったようです。で、何度かスコアを書き直しているようです。最初はオリジナルで、次に『惑星』を取り入れたスコア、最後にテンプトラックを最大限取り入れたスコア。だから、テンプトラックは監督の意向ですね。

投稿: SOW | 2012年8月 6日 (月) 00:19

たしかエンド・クレジットに「アディショナル・ミュージック」としてトッド・ボーケルハイドの名前がありました。ルトガー・ハウアー主演のSFアクション『サルート・オブ・ザ・ジャガー』(‘92)等にパーカッショナブルなスコアを提供していた作曲家です。彼はコンティの後?先?多分オープニングの、人類の音速を越える苦闘の実録フィルムに付けられた音楽はコンティとは作風が違うので、ボーケルハイドの作曲だと思います。前任者かどうかは分かりませんが。

投稿: たかし | 2012年8月17日 (金) 21:46

 ボーケルハイドはあくまでも追加音楽でしょう。後から足りないということで追加されたという意味で。
 それと、ジョン・バリーが最初に打診されていたという話が本人のインタビューにあったようです。実際に作曲するところまでは行っていなかったようです。

投稿: SOW | 2012年8月18日 (土) 10:26

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