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2012年6月25日 (月)

リジェクトスコア 12

 ジェリー・ゴールドスミスはさすがに最も多いので、4回に分けます。まず1回目。

五月の七日間(1963)
 /デイヴィッド・アムラン→ジェリー・ゴールドスミス

 ロッド・サーリングの脚本をジョン・フランケンハイマー監督が映画化したポリティカルサスペンス。バート・ランカスター、カーク・ダグラス出演。
 フランケンハイマーとアムランはそれまで2作で組んでいた。監督が撮影後にパリに行かなければならなくなり、アムランはその間に録音をしていた。しかし、製作者はアムランの音楽を嫌い、ハリウッドの作曲家を起用する。それがゴールドスミスで、スネアドラムを使ったミニマルっぽいスコアを仕上げる。アムランのスコアはジュークボックスから流れるソースミュージックとして2分半だけが使われた。
 フランケンハイマーはその後、『セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転進』と『最後のサムライ/ザ・チャレンジ』の2作品でゴールドスミスを起用した。後年、『RONIN』と『レインディア・ゲーム』にも起用しようとしたが、前者はスケジュールがあわず、後者はデモを録音したが、『13ウォーリアーズ』で急遽マイケル・クライトンに召喚されたため果たせなかった。

Chinatownチャイナタウン(1974)
 /フィリップ・ランブロ→ジェリー・ゴールドスミス

 ロマン・ポランスキー監督によるハードボイルドの名作。ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ主演。
 ポランスキーが長年組んでいた作曲家クリストフ・コメダは1969年に自動車事故で亡くなっていた。そのため、『ローズマリーの赤ちゃん』の撮影時に会ったランブロを起用することにした(俳優ジョン・カサヴェテスが彼の監督作『フェイシズ』に起用したいと思って呼んでいた)。ランブロはサックスを使ったメインテーマと、主役ふたりの愛のテーマをメインにした20数分のスコアを書き、監督と音楽の効果について確認しあった。製作者ロバート・エヴァンスも満足し、ボーナスとして1000ドルを追加で支払った。
 しかし、監督の友人である作曲家ブロニスラウ・ケイパー(1902年ポーランド生まれで、『戦艦バウンティ』などを担当した大御所。1983年没.。1933年生まれのポランスキーとは年齢が随分離れているが、同じポーランド人という繋がり)を試写に招いたところ、映画については好意的だったが、音楽について批判的なコメントが飛び出した。特に監督も納得していたラストシークエンスを批判した。公開まで2週間しかなかったが、エヴァンスは差し替えを決める。ポランスキーが次の映画のためにヨーロッパに戻る前にゴールドスミスが呼ばれ、エヴァンスと共に意見交換をする。エヴァンスは当時バニー・ベリガン(30年代のスウィングジャズのトランペッター)に夢中になっており、その方向性を提案した。しかし、30年代に少年時代を映画の舞台となったLAで過ごしたゴールドスミスは30年代の映画に30年代の音楽をつけたのではくどすぎると言い、別の方法を試させてくれと提案し、了承された。結果的に30分足らずのスコアはオスカーノミネート(受賞は『ゴッドファーザー2』)され、エヴァンスは「音楽が映画を救った」と絶賛した。
 普通ならこれで終わるところだが、おまけがふたつ。
 公開前の宣伝でパラマウントはランブロの音楽を使いたいと考えた。それを知ったランブロは自分のスコアの所有権を買い戻し、TVCM、ラジオCM、劇場予告編用に音楽使用料を受け取った。但し、この録音をリリースする場合、『チャイナタウン』といういかなる説明もつけないという契約条項がつけられ、アルバム化は困難になる。
 そこで、PERSEVERANCEレーベルがランブロのスコアを再録音してリリースするために、資金19000ドルを集めようと一口10ドルでカンパを募ったが、12人しか賛同者がいなかったため、頓挫してしまった。

2012年11月追記:PERSEVERANCEは再録音を諦め、当時のアナログ音源からアルバムをリリースした。詳細はこちら

ス★パ★イ(1974)
 /ジョン・スコット、ジェリー・ゴールドスミス

 ドナルド・サザーランドとエリオット・グールドが『M★A★S★H マッシュ』の大ヒットに続いて主演したスパイコメディ。アーヴィン・カーシュナー監督。
 イギリス・アメリカのプロデューサーがいたことが原因で、欧州ヴァージョンとアメリカヴァージョンが出来てしまった。欧州ではスコットが回転木馬のようなメインテーマをつけ、エンドクレジットでは出演者がそのテーマを口ずさむというおまけまでついていた。しかし、アメリカ側の20世紀フォックスはそれに満足できず、ゴールドスミスに新しいスコアをつけさせた。スコットのスコアはリリースされていないが、ゴールドスミスのスコアはVARESE SARABANDEがリリースした"JERRY GOLDSMITH AT 20TH CENTURY FOX"に収録された。

大いなる決闘(1976)
 /レナード・ローゼンマン→ジェリー・ゴールドスミス

 アンドリュー・V・マクラグレン監督、チャールトン・ヘストン、ジェームズ・コバーン、バーバラ・ハーシー出演の西部劇。
 ローゼンマンが見せられたフィルムにはアヴァンギャルドな音楽がテンプトラックとしてつけられていた。それが当時の流行だったからだが、西部劇にそれがあうはずもない。ローゼンマンは自身の言葉によれば「最高にワイルドで前衛的な」スコアを書いたが、20世紀フォックスはローゼンマンのスコアをリジェクト。スタジオの倉庫から音楽を取り出し、置き換えることにした。それがゴールドスミスの過去作品で、『100挺のライフル』や『駅馬車』などから選ばれた。映画音楽は特別な契約がない限り、スタジオの所有物になるため、こういった流用は自由に出来るのである。そして、次の『エイリアン』でも同じようなことが起こってしまった。

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コメント

待ってました!サントラ史上歴代ベスト10に必ずといっていいほどランクインする「チャイナタウン」もリジェクトから誕生していたのですね。おなじくロスを舞台にしたハードボイルド「L.A.コンフィデンシャル」も超傑作ですが、地元が舞台だとジェリーの感性がさらに冴えわたるでしょうか?    しかしスタジオが権利を所有している過去の音源を使い廻せるのなら、日本はおろか全米でもまともに公開されなかったフランクリン・J・シャフナー監督が台無しにした「ライオンハート」の勇ましく崇高な音楽をエドワード・ズウィック監督のような骨のある作風に旨い事当てはめて全編に使用して欲しいですね。あれほどエモーショナルな、何度聴いても震えるほど感動するサントラに巡り合う事はめったにありません。 それが無理でもタランティーノサントラみたいな掬い上げで、1曲(THE FUTURE)だけでもいいから世界中の映画ファン、映画音楽ファンに聴いて欲しいです。

投稿: GOLDDAMIEN | 2012年6月25日 (月) 19:46

PERSEVERANCEレーベルから「チャイナタウン」フィリップ・ランブロのサントラ出ましたよ!

投稿: ジグソウ | 2012年11月17日 (土) 03:20

>ジグソウさん
 情報追加します。結局、再録音は無理だったようで、音質に難のあるアナログテープのままでのリリースになりましたか。

投稿: SOW | 2012年11月17日 (土) 09:47

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