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2012年6月23日 (土)

リジェクトスコア 11

 2000年代の有名作品その3。

チーム★アメリカ/ワールドポリス(2004)
 /マーク・シェイマン→ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

 過激なTVアニメシリーズ『サウスパーク』のスタッフが製作した『サンダーバード』っぽい人形劇。ただし、当然ながら過激。
 シェイマンは『サウスパーク無修正映画版』でトレイ・パーカー監督と組んでいたので引き続き担当することになった。監督とシェイマンはブラッカイマー風(つまりハンス・ジマー率いるRC風)のスコアを意識していた。大規模なオーケストラを使った録音は終わり、監督との共作による挿入歌2曲も作った(ちなみに、他の歌は監督による)。しかし、監督には出来上がったスコアを聞いている余裕はなかった。再編集と再構成と再撮影に忙殺されていたのだ。ようやくスコアを聴いた監督はふざけすぎで、音楽がべったりと張り付きすぎだと感じた。公開まですでに1ヶ月を切っており、スタジオは作曲家の変更を決める。ハリー・グレッグソン=ウィリアムズはまさにテンプトラックにしていたRCの関係者(在籍はしていない)でブラッカイマー作品を多く担当している。時間がないため、スティーヴ・ジャブロンスキーなどのRCの若手に助力を頼み、作業に入った。最終的に映画に使われたのは典型的なブラッカイマー映画的なアクションスコアと、若干のコメディスコア、それにシャイマンと監督の作った歌となった。奇妙なことに、スコアはRCのアクション用ストックミュージックそのまんまである。
 なお、サントラは急いで作ったあまり、音楽のクレジットにシャイマンの名前が残り、「プレス時には個々の曲のプロデューサーと作曲者のクレジットは確定しておりません」と但し書きが入り、ハリー・グレッグソン=ウィリアムズの名前はどこにも入っていない。

コンスタンティン(2005)
 /ブライアン・タイラー、クラウス・バデルト

 アメコミ『ヘルブレイザー』をキアヌ・リーヴス主演で映画化。フランシス・ローレンス監督の初劇場作品。
 映画の仕事が初めてだった監督とタイラーはテンプトラックがつけられたフィルムを見て方向性を決めた。その時のテンプトラックとしてタイラーの『フレイルティー/妄執』も使われていたという。ダークな音楽と言うことで一致したため、タイラーはスコアを書き上げ、録音を終える。実際に映像と合わせた段階で、もう少しユーモアを付け加えた方がいいとなり、スタジオはバデルトに追加音楽の依頼をする。タイラーは変更を嫌がらず、それどころかバデルトと共に変更分の音楽について話し合い、仕事を進めていった。というわけで、共作という形式になったが、こういうパターンは珍しい。

イーオン・フラックス(2005)
 /セオドア・シャピロ→ラインホルト・ハイル&ジョニー・クリメック→グレアム・レヴェル

 韓国・アメリカ合作のSFアニメをカリン・クサマ監督、シャーリーズ・セロン主演で実写化。
 元のアニメ版の作曲家は選択されず、まずシャピロに依頼された。しかし、(レヴェルが言うには)感傷的すぎるという理由でリジェクト。代わりに『ラン・ローラ・ラン』などのドイツ出身のふたり組が選ばれた。これもリジェクト。最後にレヴェルが選ばれた。すでに時間に余裕がなかったが、短期間での仕事に慣れていたレヴェルには2週間あれば充分だった。

キング・コング(2005)
 /ハワード・ショア→ジェイムズ・ニュートン=ハワード

 ピーター・ジャクソンが『ロード・オブ・ザ・リング』の大ヒットで、子供の頃からの夢だった名作のリメイクに挑んだ大作。最近では最も有名なリジェクト事例だろう。
 監督は『ロード・オブ・ザ・リング』に続いてショアに依頼し、ショアは途中まで録音を終えていた。しかし、監督との音楽的方向性の違いが明らかになってくると、これ以上、友情に亀裂が入らないうちに友好的に降板することになった。この時の音楽の一部が公式サイトのビデオダイアリーで録音風景として公開されていたが、ショアの降板と共に削除されてしまった(下のビデオ)。その後のJNハワードのスコアを考えると、もっとダークでパーカッションが入る『ロード・オブ・ザ・リング』のオーク族のような感じになっていたのではないだろうか。
 なお、ショアは劇中、ニューヨークでのコングお披露目のシーンで指揮者として出演している。

ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝(2008)
 /ランディ・エデルマン、ジョン・デブニー

 ブレンダン・フレイザー主演の冒険活劇第3弾。これまでの監督スティーヴン・ソマーズは製作に回り、代わってロブ・コーエンが監督になった。
 監督はそれまで何度かコンビを組んでいたエデルマンに依頼し、彼はこれまでで最も規模の大きなアクションスコアを書き上げた。しかし、ポストプロダクションの間にアクションシーンが幾つか変更され、特殊効果も付け加えられた。エデルマンのスコアはシーンにぴったり合わせてフィルムスコアリングしていたため、音楽を作り直す必要が生じた。しかし、その時エデルマンは病に伏せっており、代わりに前作のスピンオフ作品『スコーピオン・キング』で起用したデブニーが選ばれた。最終的にエデルマンが60分、デブニーが30分という構成になっている。しかし、デブニーのスコアは効果音にかき消されてほとんど聞こえない。必要なかったんじゃないかと皮肉混じりに"TORN MUSIC"には書かれている。
 サントラはエデルマンのスコアのみなので、映画には使われなかったスコアも収録されている。

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