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2012年1月15日 (日)

レジェンド/光と闇の伝説

レジェンド/光と闇の伝説(ディレクターズ・カット) [Blu-ray]

■AMAZON

2012/02/03発売

 すでにアメリカでは発売になっていたディレクターズカットがようやく日本でも発売になるというので、昔の記事を掘り出して修正してアップすることにする。

 まずは、なぜ『レジェンド』に複数ヴァージョンあるのかおさらいをしておこう。
 ハリウッド映画は往々にして巨額の製作費がかかるため、資金提供やリスク分散の意味もあって、アメリカ国内の配給と世界配給が別の会社と言うことがある。この『レジェンド』もそうで、アメリカ国内をユニバーサルが、それ以外の地域を20世紀フォックスが配給することになっていた。元々はどちらも同じ内容だったはずが、ユニヴァーサル映画の会長(当時)だったシド・シャインバーグがこれでは若者に受けないと指摘し、急遽音楽の変更と再編集を言い渡したのである。監督のリドリー・スコットは自分の映像には音楽など大した要素ではないという思想の持ち主なので、音楽変更には異を唱えなかったらしい。そして、アメリカ公開版ができあがった訳である。ちなみにシャインバーグは『未来世紀ブラジル』のカット騒動でテリー・ギリアムと戦った男である。他にも『E.T.』続編構想など、はっきりいって迷惑な事が多かった。

 さて、日本・欧州公開版は同じ94分。アメリカ公開版は89分。日本ではDVDなどでアメリカ公開版が発売されたことはないので見た人は少ないだろう。今回のディレクターズカットは114分で、日本・欧州版をベースにしたまったく違う編集になっている。アメリカではこのディレクターズカットが発売されるまで日本・欧州版を見ることは出来なかった。
 アメリカ版は映像に関してはベースは日本・欧州版と同じだが、冒頭やラストに追加撮影された映像が入り、編集し直してある。追加撮影分は特殊メイクのロブ・ボッティンが参加できなかったため、ライティングなどでかなりごまかしてある。そのため、他のシーンとバランスが取れておらず、違和感がある。短くなった上にシーンが追加されているのでテンポは速くなっているが、ファンタジーとしての存在感や余裕のようなものが感じられない。それとこの作品はすべてセットでの撮影なので、空が映るシーンが少なく、アメリカ版は皆無となっている。この辺りも世界を感じることが出来ない一因かも知れない。

 ふたつを比較して最も違うのはやはり音楽。
 アメリカ版を担当したタンジェリン・ドリームはドイツのシンセロックバンドである。『恐怖の報酬』で初めて映画音楽を担当し、メンバーチェンジ後に『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』、『青春白書』、『炎の少女チャーリー』など立て続けに送り出している。ほとんどの作品でリズムを基調にした無機質で機械的なアプローチをしてきた。それがこの作品ではリズムは全面に出ず、雰囲気作りを重視したBGMとして徹底している。らしくないのだ。その理由が元々ついていたゴールドスミスのスコアにあったのは想像に難くない。これがシャインバーグの意図どおりなのかどうかはわからない。しかし、アメリカでの散々な評価を見れば何となくわかるだろう。加えてブライアン・アダムスとジョン・アンダーソンのヴォーカル曲が2曲挿入されており、その部分だけミュージックビデオのように浮きまくっている。
 一方、日本・欧州版を担当したジェリー・ゴールドスミスのスコアは当然ながら監督と意思疎通した上で意図通りに作曲しており、彼の作品の中でも上位に位置する出来映え。ヒロインの歌が重要なモチーフになって作品全体を締めているところなど、彼ならではのスコアばかり。アメリカ版にはなんとその歌がなくなっており、作品としてもレベルが下がっている。これを無視して新しいものをつけろと言われたタンジェリン・ドリームの困惑が目に見える。
 スコアについて比べる場合、最もよくわかるのがユニコーンのシーンだ。なにせ物言わぬ動物である。感情を表現するには編集と音楽に頼るしかない。ここで音楽のつけかたに上手い下手が如実に出る。つがいのユニコーンの片割れが殺され、角を奪われる。死の原因を作ってしまった主人公が息絶えたユニコーンに寄り添う一方のユニコーンに謝ろうと近づく。その時、ユニコーンはどんな気持ちで主人公に対するか。アメリカ版ではそれがはっきりとわからない。しかし、日本・欧州版では確かに怒りを表しているのである。これは贔屓ではない。全く同じ映像にも関わらず、ユニコーンの感情は明らかに異なっているのだ。これについてはSF大会の企画で紹介し、多くの方から賛同を得られた。他にも表現という点でかなりの差がある。音楽でどれだけの事ができるのかという、ひとつの貴重なサンプルだ。
 全体に見てタンジェリン・ドリームのスコアが薄っぺらいのは事実。ここでいう薄っぺらいとは単に音楽としてではなく、脚本の読み込み具合など映像を補助する役割として。それが前述のユニコーンや魔王の間でヒロインがダンスするシーンの音楽などで如実に現れている。アメリカ版もオープニングなどで印象的なスコアになっている事は指摘しておくべきだろう。しかし、2曲もの挿入歌が映画としての印象を叩き壊しているだけでなく、タンジェリン・ドリームのスコアをも実際以下に見せてしまっているのは否めない。無念である。

 アメリカではディレクターズカットとアメリカ公開版の両方が収録されたUltimate EditionのBD版が発売されたばかり。日本でもこちらを出せなかったものか。音楽や編集で映画がどれだけ変わるのかという、素晴らしいサンプルになるのに。映画と音楽を研究する人(ファンや監督志望者)はアメリカで発売になったUltimate Editionをご覧になることをお薦めする。BDなら日本のプレーヤーでも問題なく再生できる。

LEGEND

■AMAZON

 ジェリー・ゴールドスミスのスコア。イギリスのSILVA SCREENから出ていたものと同内容が、アメリカでもSILVA AMERICAからリリースされた。ジャケットも当時のDVDと同じイラストで統一されている。

LEGEND

■AMAZON

 タンジェリン・ドリームのスコア。廃盤なのでプレミアがついている。フローゼ+フランケ+シュメーリングのトリオでの最後の作品となった。

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