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2009年4月29日 (水)

スター・トレックの音楽1

 いよいよ来月末に封切られる『スター・トレック』だが、アメリカや日本の批評家の受けは非常によいようだ。しかし、日本でスタトレ映画が当たった例がないだけに、興行には不安が残る。
 まあ、とにかく映画版もついに11作目を迎え、同時にサントラも11枚を数えることになった。11作目はタイトルも映画第1作目とまったく同じ。しかも、時系列で言えば一番始め――最初のTVシリーズの前の話となる。
 というわけで、映画版スター・トレックの音楽について個人的な記憶と一緒に書いていこうと思う。一応、過去にサイトで書いたものの改訂増補版(^_^;)ということで。

St1 では、1作目の『スター・トレック』から。

 アメリカ公開は1979年12月、つまり、30年前になる。日本公開は翌1980年7月。そう、『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』の1ヶ月後だった。当時、高校1年生。なけなしの小遣いで近所のナショナル電器屋兼レコード店でLPを買ったのを覚えている。ここでは『スター・ウォーズ』も買った。大作サントラにつきものだったロードショー誌推薦盤の帯。ジャケットイラストはボブ・ピーク。今で言うならCOOLなジャケットにしびれたものだ。ドリュー・ストルザンなどと違い、確かな画力と構成、そしてセンスが感じられる。この人の画集が出ると言われていたが、立ち消えになったのが悔しい。映画音楽で始めてのデジタルレコーディング作品というのも懐かしい。しかし、同じ12月に公開された『ブラックホール』もジョン・バリーの音楽が初のデジタルレコーディングとしている。どっちが先かは『ブラックホール』の録音データが不明(CD化されていない)なのでわからないが、『スター・トレック』は製作が押しており、録音は10月末から11月末までかなり時間を取って行われている。『ブラックホール』の製作が順調だったとすると、こちらの方が早かった可能性もある。余談だが、この2作とも劇場公開ではスクリーンが真っ暗な状態で序曲が流れたのは偶然の一致だろうか。なお、ゴールドスミスは初めてのデジタルレコーディングのために新たな録音技師としてブルース・ボトニックを起用し、これ以降のほとんどの録音でボトニックを使っている(たまにプロデュースも任されている)。ボトニックは60年代からTHE DOORSなど主にロック畑の録音をこなしており、最新技術に詳しかったのだが、畑違いにも手を伸ばす辺りはゴールドスミスらしい話だ。

 さて、本題。
 プロデューサーの故ジーン・ロッデンベリーは『スター・ウォーズ』に負けない音楽をということでジョン・ウィリアムズに対抗しうる巨匠ジェリー・ゴールドスミスを起用する。前年には傑作『エイリアン』を担当し、それまでにもSF作品を数多く手がけていただけにベストな選択だった。そして、TVシリーズでファンが親しんできたメインテーマをあえて無視する方法を採ったのだが、これが第1作に対するファンの不評の原因のひとつとなった(実際には航海日誌のシーンでTVシリーズのテーマがアレンジされて使われており、その部分のオーケストレイションは作曲者アレクサンダー・カレッジが担当している。長年ゴールドスミスのオーケストレイションを担当しているが、この時はスケジュールがあわなかったため、この部分だけのために時間を割いたそうだ)。さらに映画自体が妙に格調高く、スタトレらしくなかったのが問題だった。スタトレはカーク船長のオレ様な性格に代表されるように、もっと人間的で下世話なところがいいのであって、テーマ性だとかSFである事にこだわる必要はなかったのだ。スコアの方はフィルムスコアリングに厳格なゴールドスミスだけあって、当然映画の格調高さにあわせて作曲されている。ゆえにスタトレらしからぬ格調と豪華さに満ちていた。古くからのファンとしては受け入れがたいスコアだったろう。だから、その後の映画版ではゴールドスミスのメインテーマは無視されてしまった。それでも愛着があるのか、意地なのか、ロッデンベリーは後年スタートした『新スター・トレック(TNG)』ではゴールドスミスのテーマをアレンジして使用している。新しいファンにとっては、むしろこちらの方に馴染みがあるだろう。

 肝心のスコアについて。序曲として流されたリリカルで気品すらあるヒロイン・アイリーアのテーマ。ファンファーレから始まり、マーチ調になるメインテーマ。その後に続くクリンゴンとヴィジャーとの戦いでは得意のホーンとパーカッションがからむクリンゴンのテーマに機械的なヴィジャーのテーマが交互に現れる。アレンジを変えて何度も出てくるこれらのテーマは後続の作曲家たちにも多大な影響を与えた。特にクリンゴンのテーマは3作目のホーナーが参考にしたのは明らかだ(初期のホーナーはゴールドスミスの模倣を臆面もなくやってきた経緯がある)。そして、ヴィジャーを表現する電子的なクワァ~ンという音。実はシンセは一切使わずに、ビームと呼ばれるスチール製の筒を叩いて出している。ゴールドスミスらしい手法だ。他にホーンのマウスピースを外して吹いたり、ウォーターホンを使ったりして異質な世界を作り出す効果を生んでいる。改修されたエンタープライズをカークたちがなめるように見つめるシーンで流れる、メインテーマを情感たっぷりにスローなアレンジで聴かせる"THE ENTERPRISE"。スポックが単身ヴィージャーに迫る緊張感あふれる"SPOCK WALK"。聞き所は多く、ゴールドスミス以外では書けないという点で素晴らしい作品である。なにせ派手な見せ場もほとんどなく、彼以外の作曲家が担当しておれば間が持たなかったのではないだろうか。
 などとしたり顔で語っているが、当時の私にはあまりおもしろみが理解できず、『帝国の逆襲』の色彩感とバラエティ豊かな世界の方に惹かれていた。今ではスター・ウォーズのサントラはほとんど聴かないのに、スター・トレックはどの作品も思い出したように聴きたくなる。特にこの1作目は別格だ。

 やっぱり長くなったので、残りは次回。

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コメント

 はじめまして。「スター・トレックの音楽」シリーズ、楽しく読ませていただいております。僕が「1」の輸入レコードを買ったのは1979年の暮れ、今は無きすみや渋谷店でした。実はこのとき初めて裏ジャケットにバーコードなるものを発見し、これはきっとSF映画だから本編に関連のある何らかの記号に違いない―とあれこれ考えた思い出があります。今考えるとメジャーの米COLUMBIA盤だったのでいち早くバーコード方式を取り入れていたんですね。ゴールドスミス好きでしたので随分聞きましたが、圧倒的にA面が良かったですね。B面は「Spock Walk」以外あまり聞きませんでした。

投稿: ポカロ | 2009年5月10日 (日) 21:52

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