07/11/2007

ダーククリスタル、CD発売

ダーククリスタル

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 これまでアート本の紹介もしたことがあるが、ファンタジー映画の傑作かつオンリーワンの作品。アメリカで25周年記念DVDがリリースされるのにあわせて、同じジャケットアートでサントラが正規としては初めてCD化された。実は過去にこれもDVDが出た時、音楽だけ聴けるミュージックトラックが収録されており、それと同じ音源と、サントラLPの音源を2枚組にしたCDが出ていた。LPは映画に使われたものを編集して、アルバムとして聞きやすくしてある。残念ながらプロモーション用扱いで、数量限定だったので、限られたショップでしか扱われず、すでに廃盤。しかし、今回はLPと同内容の1枚物とはいえ、通常CDなのでamazonなどでも扱っているし、価格も控えめ。『亡国のイージス』も手がけたトレヴァー・ジョーンズの劇場作品2作目。ロンドン交響楽団による重厚な演奏をじっくりと聴いていただきたい。
 しかし、25周年記念ですか。俺がこれを見たのは高校3年生の2月だったか。大阪梅田のナビオ阪急だったはず。確かに日本公開から24年だ。ロボトロニクスという言葉で宣伝していた。しかし、どこかの新聞が勘違いしていたのを覚えているぞ。「あれはロボットじゃない。人間が入ってるんだ! こうやってるに違いない」とか写真と図解入りで暴露記事。アホか。それとも話題作りのやらせだったのか。今となってはわからない。

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06/26/2007

伊福部昭の芸術9 祭

伊福部昭の芸術9 祭 伊福部昭音楽祭ライヴ

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@TOWER

 つい3ヶ月前に行われた伊福部昭1周忌追悼コンサートを収録した2枚組。完全収録ではないようだ。総監修は伊福部昭の愛弟子でもある和田薫。これは行けなかったので、買わねばなるまい。
 指揮:本名徹次 日本フィルハーモニー交響楽団
 2007年3月4日 サントリーホール
 収録曲は下記のとおり。

 SF交響ファンタジー第1番
 銀嶺の果て
 座頭市物語
 ビルマの竪琴(新編纂)
 「わんぱく王子の大蛇退治」より“アメノウズメの舞”
 オーケストラのための 特撮大行進曲 (新編纂)
 管絃楽のための「日本組曲」
 シンフォニア・タプカーラ

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06/11/2007

映画予告編音楽集

 映画音楽(特にスコア)ファンというのはそれほど多くはないが、さらにピンポイントなのが映画の予告編に使われた音楽のファン。しかし、意外なことに、それも特に映画音楽ファンじゃない方から「~の映画の予告で流れた音楽が欲しい」という問い合わせがくる。それも少なくない。思うに、それだけインパクトのある使い方をされているのだろう。
 映画の予告編に使われる音楽というのは、実際にその映画で使われる音楽ではない場合がほとんどだ。予告編は別の会社が専門的に製作しており、その段階では音楽はまだ完成していないからだ。まれに、先にイメージ音楽を録音する場合もあるが、それはあくまでも少数。だから、別の映画のサントラや既製曲をイメージに合わせて載せるのが一般的。その次に予告編専用のライブラリー音源を使用する場合が多い。
 というわけで、「あ、格好いいな」と思っても、その曲は実際に何だったのかわからない。わかっても、別の映画でサントラに入っている場合はいいが、サントラが出ていない場合もあるし、予告編のためのライブラリーなら一般人には手に入らない。が、中には手に入る時もある。というわけで、予告編関係のアルバムをご紹介。まあ、予告に使われるようなヴォーカル曲にはあまり興味がないので、インストが中心になるが……。
 ついでにiTMSのリンクの張り方がわかったので試しておく。いわずもがなだが、iTMSとはapple社が提供する音楽ダウンロードの世界的最大手。iPodがあると簡単に持ち歩けるが、なくてもCD-Rに焼ける。iTunesがインストールされていればアイコンをクリックすると起動するはず。試聴も出来るので便利ではある。音質は今一歩だが。

EsposthumusUNEARTHED/E.S.POSTHUMUS

CD BABY

 予告編とは本来何の関係もないインディーズのプロジェクトだが、ここから数多くの予告編音楽が生まれた。ティム・バートン版『猿の惑星』に"POMPEII"と"MENOUTHIS" 、『マイノリティー・レポート』に"TIKAL"、『マトリックス・リローデッド』の日本版予告に"EBLA"、『スパイダーマン』に"POMPEII"、『トゥームレイダー2』に"MENOUTHIS"、『XXX』に"HARAPPA"などが使われている。エニグマとかがジャンル的には近いと思う。アルバムタイトルどおりに曲タイトルが遺跡になっているのが面白い。

ArsarcanaTHE SAVAGE TANGUE/ARS ARCANA

CD BABY

 これもインディーズのプロジェクト。『ドゥーム』に"Dryka"、『スカイ・キャプテン』に"Dryka"と"The Rosetta Stone"、『キング・コング』に"The Rosetta Stone"、『宇宙戦争』に"Tyrannos"、『シリアナ』に"Dryka"などが使われている。フルオケ+コーラスで、かなり重厚でゴシック調の音楽。

EpiconEPICON/GLOBUS

CD BABY

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 これは逆パターン。IMMEDIATE MUSIC(間に合わせの音楽)というプロジェクトで、予告編用の音楽を作っていたグループが、それを元にしてオリジナルのアルバムを製作した。だから、どこかで聴いたような曲があるが、そこにヴォーカルが入ったりしているので全体の印象はかなり違っている。ちょっとクラシカルなヴォーカルアルバムとしても聴ける。ちなみに、これまでに『スパイダーマン2』『X-MEN3』『ロード・オブザ・リング』『ダ・ヴィンチ・コード』などの予告編音楽を書いている。ゴシックメタルのTHE GATHERINGの元ヴォーカリストANNEKE VAN GIERSBERGEN嬢や『ナルニア国物語』など映画主題歌にも多数参加しているLISBETH SCOTTなどゲストも豪華。オーケストレイションや指揮などスタッフもハリウッドの一流どころ。オケはノースウェスト・シンフォニア。

ComingsoonCOMING SOON/JOHN BEAL

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@TOWER

 予告編音楽を専門的に作曲してきたJOHN BEALによる予告編音楽集。ジェリー・ゴールドスミスによる『ジャッジ・ドレッド』の予告編音楽など別の作曲家の作品もちゃっかり入ってます(^_^;)

Position1ORCHESTRAL SERIES VOL.1/TOM SALSA

CD BABY
Tom Salta - Position Music - Orchestral Series Vol. 1

 POSITION MUSICというレーベルが製作した映画宣伝用の音源で、ORCHESTRAL SERIESというのが2枚出ている。プロモ扱いと明記されているのだが、堂々と試聴・購入できる。どちらもアクション/アドヴェンチャー/サスペンスというジャンルの予告編などで使われることを想定して、いかにもそれっぽい曲調。オケに打ち込み、コーラスというスタイル。
 VOL.1はWii『レッドスティール』などのゲームで活躍しているトム・サルタ。密度がないので、ちょっとチープな感じもする。

Position2ORCHESTRAL SERIES VOL.2/JAMES DOOLEY

CD BABY
James Dooley - Position Music - Orchestral Series Vol. 2

 VOL.2はハンス・ジマー麾下のRCで『ラスト・サムライ』など追加音楽をよく書いているジェームズ・ドゥーリー。さすがにこちらの方がオケの扱いがこなれている感じ。すでに1曲目の"TRINITY"が『スパイダーマン3』の予告に使われている。こちらはコーラス抜きのヴァージョンとあわせて、パーカッションのみを収録したCDもついてくる。本当に加工しやすい宣伝素材という扱いだ。

 こんな感じで、興味がある方は試聴してみてください。

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05/29/2007

戦士映画音楽傑作選コンサート

Otoko2 夕方に新宿へ向かう。
 開演30分前からカメラマン不詳宮嶋氏によるトーク。その時点でははっきり言って客席はガラガラ。事前の宣伝が不充分で、サントラ関係のショップなどにもチラシがないという状態。この辺りの事情がうかがえるのが、トークの中で触れられたそもそもの企画。呑みながら、戦争で映画音楽でコンサートやりたいねって、結構、突発的な思いつきで企画されたのか。トークの間に席が埋まってくる。それでも7割弱か。
 さて、演目。事前に演奏できない曲があることがありますと断っていた上に、最初のチラシと2回目のチラシに記載されていた演目がかなり違うこともあり、いったい、何が演奏されるのかと期待と不安をもって当日配布の案内に目を通す。以下、当日の演目。

戦争のはらわた、プラトーン、バックドラフト、トラ・トラ・トラ、パットン大戦車軍団、エアフォース・ワン、アポロ13、沈黙の艦隊、決断、皇帝のいない八月、硫黄島からの手紙、鷲は舞い降りた、遠すぎた橋、Uボート、プライベート・ライアン、1941、アンコールはシンドラーのリストで、全17曲1時間40分。腹一杯。

 全体にちょっと低音が大きく響きすぎてシャープさがないのが難点だったが、迫力はあった。ステージが狭いので、この規模ではぎりぎり。指揮者が袖から現れる時に楽団員を避けるように歩かなければいけないとか、鉄琴の位置が観客側で音がはっきり聞こえすぎ。ゴールドスミス3連発はいい。ちゃんと琴も生演奏。ただ、マイクが音を拾いすぎて、これもはっきりと聞こえすぎ。鷲は舞い降りたには感動。Uボートはオリジナルよりパワフル。
 後半の最初になぜか三枝成章が現れて、戦争反対のスピーチをする。ちなみに最初の一言、「日本一客単価の高いコンサートにようこそ」だった。楽譜取り寄せと編曲にかなり金を使ったのだろう。
 チラシが前と違うのは、前のに使った画像にクレームがついたかららしい。さもありなん。

 余談。行く前にmixiで何となく検索してみたら、楽団の方を発見。担当楽器がわかっていたので、あの人かいなと見る。管楽器奏者としてはやり甲斐のある演目が多いが、それはそれで息がつらいだろうな。

 終演後、会場で出会った友人たちと食事に行き、マンゴービールなるものを飲んだりして話す。帰宅は23時半。

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04/15/2007

バーニング

バーニング

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@TOWER

 80年代スプラッターブームの中で生まれた映画では唯一と言っていいほどサントラがCD化されていなかった作品。ようやくCD化。まあ、LPとまったく同じで、曲も増えていなければ、マスタリングなどの情報も一切ないので、LPを持っていると旨みはあまりないが、リック・ウェイクマンの音楽がCDで聴ける。メインテーマだけは結構好きなんだよね。
 70年代末から80年代のホラーの音楽はショック音とノイズがメインで、メロディがはっきりしない今のホラーとは違い、美しくも悲しいメロディが主題となり、その上に不協和音で味つけされたものが多かった。代表的なのがジョン・カーペンターの『ハロウィン』であり、チャールズ・バーンスティーンの『エルム街の悪夢』だが、この『バーニング』もその意味では代表のひとつ。メインテーマのもの悲しさは他の追随を受け付けない。静かなキーボードから次第に展開してプログレになっていくのは圧巻。まあ、前半はウェイクマンのソロアルバムといっても問題のない構成と出来なので、プログレ入門にも最適?
 映画としては『ゾンビ』のトム・サヴィーニによる特殊メイクが相変わらず残酷なまでに凄惨なので、怖いよりも痛い記憶しかない。ちなみにこの映画、後にミラマックスを設立するハーヴェイ・ワインスタインが製作を担当した初の映画。その後、『スクリーム』や『パラサイト』などのホラーや『ロード・オブザ・リング』トリロジーを製作総指揮することになる。

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03/31/2007

GOD OF WAR II

Gow2_2GOD OF WAR II

 全国?万人のクレイトスファンの皆さま――待望の続編です。が、日本版の発売が決まりません。
 ご存じない方――PS2の傑作アクションゲームです。SCEA(ソニーコンピュータエンタテインメントアメリカ)が製作したギリシア神話世界を舞台にしたマッチョハゲ親父が血しぶきまき散らしながら神に挑みます。アメリカでは大ヒット。数々の賞も受賞しています。しかし、日本では本家SCEが発売しないで、ローカライズをカプコンが請け負いました。残虐ゲームに対して腰が引けまくっていますね、SCE。汚いことは余所に回せと言うのでしょうか。そんな状態なので、続編はもっと残虐ですので、ますます難しい。果たして日本版は出るんでしょうか。
 ちなみに前作はハゲでマッチョな主人公クレイトスが戦神アレスに復讐するため、アレスに手を焼くアテナ、ポセイドン、ゼウス、ハデスの力を借りながら、絶対的なパワーを秘めたパンドラの箱を求めるという物語。続編はというと、さらにディープ。ゼウスに力を奪われたガイア、アトラスなどタイタン族が神々に放逐されたクレイトスに力を貸し、時間を操る運命の女神を求める話。さらにスケールアップです。おまけにイアソン、ペルセウス、プロメテウスやイカロスなんかも登場。前作のキャラもちゃんと使って、さらに血みどろな大活劇。唯一の問題は国内発売が不明なこと。そして、次はPS3になるらしいこと。さらに年内にPSPも出るとか。まあ、PS3もPSPもリージョンコードがないので、それはいいんだが。

 以下、ゲーム内のバレあり。

 前作も序盤から巨大ボス登場でプレイヤーの心をわしづかみだったわけだが、今回もいきなりの巨大石像登場。『アルゴ探検隊の大冒険』のタロスを彷彿とさせる石像がもの凄い迫力で襲ってくる。その後はペガサスに乗って空中戦。グリフォンの大群相手に宙を飛び、相手の翼を切り落としては投げ、引きちぎっては投げ。空は真っ赤ですな。ここがカメラワークと大盛り上がりの音楽もあいまって、中毒性のかっこよさ。その他のボス戦も一工夫あって攻略のし甲斐があります。バランスや繰り返して発見するという感覚は『ゼルダの伝説』に近い。惜しむらくはきちんと終わっていた前作と違い、「さあ、これからが本番だ」というところで終わること。次でクレイトスとオリュンポスの決着をつけるのか。

GOD OF WAR II

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 で、なぜかサントラはリリースされてもうすぐ発売。しかし、前作はアメリカのソニーが専門サイトでダウンロード販売していたが、日本からでは購入できない。今作はiTUNESでも販売しているが、これもアメリカのみ。前作のイメージはそのままに、オケ増強などでさらに豪華な音になった。激燃えである。

ゴッド・オブ・ウォー

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 前作は廉価版が出てますので、アクションが好きで、多少の血しぶきと残虐表現がOKな人は是非。これでも何カ所かローカライズで残酷・エロが修正されているんだが、中途半端。しかし、『デッドライジング』と違って、ゲームとして一番の肝は残酷部分ではなく、バランスの良さと、ストレスのないゲームプレイ。ロード時間ほぼなし。最初のロードが多少かかるが、ゲーム中はほぼノーウェイトというのは国産のゲームも見習って欲しい。

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03/17/2007

300

 先週アメリカで封切られ、初週の週末興収が7000万ドルを突破という、誰も予想しなかった記録的な大ヒットをした『300』。IMDBでの評価も高く、今日現在で8.3/10。
 映画は『シン・シティ』の原作者でもあるフランク・ミラー(『ロボコップ2』の原作なども)によるスパルタ王レオニダスを主人公とした史劇。300人対100万人という激燃えのシチュエーションを独特の粗い画質で描く。史劇っつっても元はアメコミ。外連味たっぷりの仕上がりの原作をさらに外連味たっぷりに、というかハッタリをかましまくっているのではないかという気がするのが、サントラを聴いた感想。日本公開は初夏とのこと。

300 限定盤

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@TOWER


300 通常版

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 上2枚がサントラ盤。限定盤はデジパックで15ページのブックレット、カード3枚(両面にメインキャラ)が封入されてあるが、収録曲は同じ。
 音楽担当は同じザック・スナイダー監督と『ドーン・オブ・ザ・デッド』でも組んだタイラー・ベイツ。その合間にはもうすぐ感想を書く予定の『スリザー』を担当している。元々90年代からB級作品を担当していた若手だけに、ハッタリをかますのはお手のもの。『300』ではフルオケにパーカッションを大々的に加え、さらにギター、ベース、キーボード、男女コーラスが参加。音楽的には正統的なオーケストラスコアから民族音楽的な旋律、ロック調のリズムと種々雑多なスコアになっている。パーカッションの多さとロックに近いリズムのせいか、最近の香港・韓国作品における川井憲次作品にも通じるところがある。メインとなるモチーフがほとんどないところなど惜しいが、こういうアプローチもありかと。

300

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 言わずと知れたフランク・ミラーによる原作。

300:THE ART OF THE FILM

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 原作と同じ装丁をした映画のメイキング本。原作のコマと対応するストーリーボードと完成した画を対比しているページが多く、かつてこれほど原作に忠実な映画化はないのではないかと思われる。最大の違いは、原作ではスパルタ兵は全員フリチンであること(^_^;)

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01/31/2007

2001年宇宙の旅

20012001年宇宙の旅

@TOWER

 言わずと知れたスタンリー・クーブリック監督の名作といえば、『ツァラトゥストラはかく語りき』や『美しき青きドナウ』などのクラシックを上手く使った作品としても有名である。が、これはサントラではない。サントラになるはずだったスコアを収録したアルバムだ。
 元々、クーブリックは『スパルタカス』で組んだアレックス・ノースにオリジナル音楽を書いてもらうつもりで、クラシック音楽をテンプトラック(作曲家に監督がイメージする音楽の印象を伝えるために既製曲を映像にあわせてつけたもの)にしていたというのはサントラファンには有名な話。クーブリックは可能な限りテンプトラックに近くという指示をしたようだ。おかげでできあがったこのスコアは元にかなり近い物になっている。しかし、逆にその努力が災いして「それならテンプトラックをそのまま使えばいいや」とばかり、キューブリックはノースに一言の相談もなしにテンプトラックを映画に使用した。それが公開された映画だ。ノースは途中までしか仕事をしなかったことになるのに映画が完成したことをいぶかりつつ、試写で完成直前の映画を観て仰天したという。そりゃそうだろう。
 というわけで、これがその当時、ノースが録音したオリジナルスコア。長年所在がわからなかったが、オリジナルテープが発見され、ついにリリースの運びとなった。
 詳細なライナーノートには当時の様子が記されている。それによると、当初クーブリックはカール・オルフの『カルミナ・ブラーナ』を流しながらアーサー・C・クラークと一緒に脚本を書いており、当時71歳のオルフに依頼したらしい(ちなみにオルフは1982年に亡くなっている。作風や題材からもっと前の作曲家というイメージがあるが、20世紀の作曲家だ)。もう年だし、そんな仕事はできんと断られると、クラシックにこだわりがあったクーブリックはフランク・コーデルにマーラーの3番を映画用に録音してくれと頼んだらしい。当初からこういう状態だったのだから、ノースに依頼した段階で結果は見えていたということか。このCDを聴いていると、ノースの苦闘の後が偲ばれる。極めつけは楽譜の写真だ。曲名を書いたその下に、「スタンリーはこの曲を嫌っているが、私は好きなんだ!」 実際、ここにあるオリジナル曲を流した『2001年宇宙の旅』を見てみたいものだ。

2001jgALEX NORTH'S 2001

@TOWER

 実はこのスコアには再録音盤もある。当時はまだ上記のオリジナル音源の存在がわからなかったので、ノースの盟友でもあった故ジェリー・ゴールドスミスがナショナル・フィルを指揮して録音したものだ。演奏も音も最高だが、ノースがすでに亡くなっていたために確認が取れず、ノースが担当した別の映画のスコアが混じっていたことが録音後に判明している。このCDでは11曲目で、映画の後半で使われると考えられていた。しかし、実際には後半は作曲自体していなかった。オリジナルが発見されたとはいえ、最新の録音なのでダントツに音がよいので価値が下がるわけではない。なんといっても、ゴールドスミス&ナショナル・フィルだし。

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12/20/2006

007/カジノ・ロワイヤル

 ジェイムズ・ボンド第21作目にして前評判の悪かったダニエル・クレイグの新007デビュー。公開前からすでに次回作の出演が決まっており、製作会社側の自信が見える。しかも、初の連続物――直接の続編になるようだ。原作は短編集の1編。
『カジノ・ロワイヤル』というとバート・バカラックのお洒落な音楽と主題歌がイメージとしてあるわけだが、正当シリーズとして製作された今作は正反対に血なまぐさいバイオレンス作品。しかし、タイトルバックのイメージは過去の作品に雰囲気的に近いお洒落さ。恒例ガンバレルへのつなぎ方も従来にない手法。オープニングだけでも観る価値あり。その後のアクションも切れがよく、中盤までは完璧。しかし、その後、メインのボンドガール登場してからはスローペースになる。これはヒロインでもある彼女とボンドの関係を描くためという意図はわかるのだが、そのせいで上映時間が長くなりすぎた。しかも、最後の方は「まだかよ」というくらいダラダラと進んでいく。だいたい想像がつく展開なだけにもう少しコンパクトにならんかったのか。
 それにしても、製作途中で敵を含めて配役がなかなか決まらずにもたついていたとは思えないほどの完成度である。正直びっくり。

007/カジノ・ロワイヤル

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 サントラだが、主題歌は未収録。クリス・コーネルの意向のようだが、メインメロディはスコア担当のデイヴィッド・アーノルドとの共作なわけで、ちょっと納得できない。4作目の登板になるアーノルドのスコアは原点回帰で、テクノ色を廃した骨太のアクションスコア。ダニエル・クレイグの筋肉に触発されたか? 70分を超えるので、聴く方にも体力が必要。

You Know My Name

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 というわけで、こちらが主題歌のシングル盤。高いぞ。

@TOWER

 と思ったら、こちらは半額だった。それでも高いので、iTUNESでダウンロード購入すれば150円ですみます。

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11/09/2006

ベイジル死去

 昼前に出かけて雑用を住ませて帰宅すると、掲示板に訃報が。自分の中で何かが落ちるのがわかった。
 ベイジル・ポルデュリス(BASIL POLEDOURIS)、ガンと闘いつつ、死去。享年61歳。
 ハリウッドの映画音楽作曲家だが、メジャーな存在ではない。USCでジョン・ミリアスと共に学び、『ビッグ・ウェンズデー』でメジャーデビュー。その後、『青い珊瑚礁』で認められ、一般に知れ渡ったのは何と言っても『コナン・ザ・グレート』だった。ヒロイック・ファンタジーを音で具現化したといってもいい鉈でぶった切るような迫力あるスコアは感動的だった。その後、オランダ時代からポール・ヴァーホーベンと組み、『グレート・ウォリアーズ』や『ロボコップ』なども担当(しかし、ヴァーホーベンは盟友をふたりとも失ったのか)。最近の作品はミシェル・ヨー主演の『レジェンド 三蔵法師の秘宝』とTV作品"The Legend of Butch & Sundance"。代表作は『スターシップ・トゥルーパーズ』になるのか。
 音楽的には骨太のオーケストラ作品だけではなく、シンセのみの作品もあり、大自然や動物物を書かせたら右に出る者はないと思う。『ラッシー』『フリー・ウィリー』などは傑作。青春スポーツ物にも佳作が多く、『ウィンズ』や未公開の"KIMBERLY"など美しいメロディも数多い。極めつけはHIVの青年を描いた『ラスト・パーティ』での自らが弾くピアノのみのスコア。これを聴きながら冥福を祈る。

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