非常にバカバカしい問題が持ち上がっています。東京都の条例ですが、これは全国に波及する大きな問題ですので、転載して取り上げます。
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このところ、われわれ物書きの間では笑いの種になっていたおバカな条例が、実は成立寸前だと知って、にわかに波紋が広がっています。
アニメや漫画、ゲームに登場するキャラクターを「非実在青少年」として、生身の人間と同等に扱い、これを登場させた作品を児童ポルノとして厳しく規制しようというもので、所持しているだけでも処罰の対象となる由です。
ある方の言葉を借りれば、「東京都の「非実在青少年」規制。エッチな漫画が読めなくなるだけの問題じゃありません。これが通ると、私たちの表現や言論を、国や行政が勝手に「有害」かどうかを認定する権利があると認めることになります。思想信条は無条件に自由であるべきで、それを無条件に表現できなければ自由ではありません」ということになります。
以下は、編集者から評論家、研究者に転身した藤本由香里・明治大准教授の日記からの転載で、できるだけ多くの人に知ってほしいということで、ここに掲出する次第です。
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すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、2月24日に、東京都青少年健全育成条例の改正案が出され、その中に、「非実在青少年」(つまり実写でなく、マンガ・アニメ・ゲームに出てくる青少年)への規制が盛り込まれています。
これは、 「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの」と規定されており、つまり設定が18才以上になっていても、「18歳以下に見えれば」ダメ、ということです。
つまり、国の方で何度も改正(改悪)が話題に上りながらも、反対が多く先に進まないでいる「児童ポルノ法」における、「単純所持規制」(=とくに売買する意思を持っていなくとも、「児童ポルノにあたるもの」を単純に「持っている」だけで逮捕)、「マンガ・アニメ・ゲームその他、画像として描かれる青少年の姿にも児童ポルノ法を適用する」というもくろみを、都の条例で先に決め、規制してしまおうという法律です。
なので、今のところ罰則はありませんが、「単純所持」も禁止されています。
おまけに、上記に規定された意味での「児童ポルノ」(つまり非実在青少年を含む)の根絶に向けて努力し、都に協力するのが「都民の義務」と規定されています。
第十八条の六の四 何人も、児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する。
2 都民は、都が実施する児童ポルノの根絶に関する施策に協力するように努めるものとする。
3 都民は、青少年をみだりに性的対象として扱う風潮を助長すべきでないことについて理解を深め、青少年性的視覚描写物が青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害するおそれがあることに留意し、青少年が容易にこれを閲覧又は観覧することのないように努めるものとする。
これだけ読むと、青少年が読まないよう留意すればいいのかと思うかもしれませんが、成人が読むものもすべて、規制の対象になります。
都条例の改正案の全文は以下で読めます。
このうち、後半の、とくに赤で反転してあるところが重要な部分です。
http://fr-toen.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-cbc1.html
また、今日、いままさに行われている緊急集会のお知らせ
http://icc-japan.blogspot.com/2010/02/blog-post_27.html
も含め、この問題に関する基本情報をまとめたサイトは以下です。
http://mitb.bufsiz.jp/
「18歳以下に見える」とか、「不健全」とか、いくらでも恣意的に解釈できる条文の上に、これらの規制を推進しようとする都に対し、全面的に協力するのが「都民の義務」とするなど、これは戦前戦中のファシズムか? 「非国民」!とどこが違うの? と言いたくなるくらい問題のある法律なのですが、問題は、
今の状況だとほぼ間違いなく、この法律は通ってしまう!
ということです。
そして、出版社のほとんどすべてが東京に集中している中で、この法律が通ることは、国の法律ができたのと同じ効果を持ちます。
にもかかわらず、不思議なことに、ネットでも、マイミクさんの日記やMLでも、この問題はほとんどまともには話題になっていません。おそらく、あまりにもばかばかしい規定ゆえに「半笑い」的なコメントが多く、みんな「こんなばかばかしい規定、通るはずない、と思っているのだと思います。なぜかネットでも、個人のブログや痛いニュース以外に、信頼できるとされる一般メディア(新聞系のニュースなど)でこれを取り上げているところはないし、新聞でも報道されていないので、みんな冗談だと思っているのだと思います。
けれど、繰り返しますが、
今の状況だとほぼ間違いなく、この法律は通ってしまう!
2月24日に案が発表されて、都民が意見が言えるのは25日まで(つまり1日だけ)。
議会での質問が許されるのは3月4日(代表質問)・5日(一般質問)だけで、これも数日前には質問を提出していなければならない。(つまり議員でさえ、検討できるのは3日程度)
で、18日の13:00の付託議案審査がもっとも重要で、今月末には投票、決定、ということになります。
現在、都議会の会派は石原都政与党(自民、公明、平成維新の会)が62議席、石原都政野党(民主、生活者ネットワーク、共産、自治市民)が65議席という構成です。
野党が全員反対にまわれば、否決できるのですが、今のところ、民主党内ですら、意見統一がとれていない。知人によれば、
①都議では野党の民主議員が全部法案可決に反対しても過半数に満たず、
民主自体もきれいに可決反対で意見がまとまっているわけではない。
②今回はこの法案はケイタイ・ネットに関する法案とセットで提出されており、
このケイタイ・ネット関係の法案はちょっと現段階ではあまりに穴がありすぎ、ほぼ通らない
ということになっていて、それが災いする可能性も高い。つまり二つあげたもののうち二つともが
否決されることは珍しく、ひとつを通さない代わりにひとつを通すということは議会ではよくある。
こうしたことから、この法案は何もしないでいると通る可能性が高いだろう」
ということです。
けれど、先日、もう賛成を決めているからダメだろう…と言われていた、「生活者ネットワーク」の議員さんにヤマダさんたちと一緒にお話をしに行ってきたら、ちゃんと聞いてもらえた、という感触を持ちました。そして、この法案の危険性を訴えたのが、ほぼ私たちが初めてのようだったのが印象的でした。
都議の方たちも、あまりにも現場から何も反対の声が上がってこないので、不思議に思う状況のようです。現場から反対の声があがらないとどうしようもない、との声も聞かれました。
私もあまりにみんな騒いでいないので、半信半疑だったのですが、各方面に確かめても、「このままだと通る」ことは確実です。
まだ間に合うかもしれません。広報の手段を持っている方は、この法案の危険性を、早く、広く、伝えていただければと思います。
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断っておきますが、児童ポルノ・児童売春には嫌悪感を覚えますし、規制・処罰をすべきだと思います。しかし、これは別問題です。私が関わっているのは主に出版・ゲームですので、それに限って見ますと、ライトノベルやゲームにはかなり美少女のイラストが使われ、中には扇情的な表現もあります(カバーだけの場合も多いですが)。それらも誰が判定するかわからない曖昧な規定で、アウトになる可能性があります。健康的なお色気すら認められないかもしれません。まして、コミケにおける男性向け(いや、BLもですね)二次創作なんてほとんどアウトでしょう(警視庁はコミケ会場で現行犯を大量逮捕で嬉しいかも知れませんが、現段階ではそこまで規定していません)。
さらに、多くの出版社は都内にありますが、規制のせいで出版社や印刷所の他府県移転も起こりうるでしょう。その前に倒産の危機もあります。都の税収減は確実です。国を挙げてアニメ・マンガ・ゲームを文化として輸出しようとしているというのに、つぶす方向に持っていくつもりでしょうか? はっきり言って、権力の暴走以外の何ものでもありません。
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