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12/26/2006

黒沢明VS.ハリウッド

Kurosawa_1黒澤明VS.ハリウッド『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて

著:田草川弘 刊:文芸春秋社

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 この本が出るというのは今年の早くに知っていたのだが、いつ出たのか知らないまま年末まできてしまった。それが第33回大佛次郎賞を受賞したと新聞で知り、慌てて買ってきた。太い本だ。内容も太い。サブタイトルそのままに、あの映画で黒澤に何がおこったのかを、丁寧な取材と資料によって解き明かしていこうというドキュメンタリーである。
 著者は企画が立ち消えた『暴走機関車』(のちに黒沢の脚本を元にしてアンドレイ・コンチャロフスキー監督によって映画化された)の頃から英文翻訳担当として黒澤を手伝い、『トラ~』の際には黒澤の脚本を英訳し、ハリウッド側の脚本を和訳して日米の橋渡し役をしてきた人物。その後はまったく接点はなかったらしいが、いつか誰かが調べるだろうと放置してきたこの問題に誰も着手しないため、自分で書くことにしたという。しかし、日本には資料はほとんど残っておらず、アメリカで数々の資料を発掘し、調査した。その結果、当時何が起こったのかを可能な限り客観的に描こうとしている。以前、FSMから限定版サントラがリリースされた時、リーフレットに黒澤の絵コンテなどが載っていた。これも貴重な資料だったが、やはり資料の保存という点に関してアメリカは素晴らしい。価値を理解している。
 実際にあの時、何が起こったのかは本書を読んでいただきたい。著者は決めつけはせず、事実のみを書き、推測は最低限にとどめている。文章も素晴らしい。黒澤作品――特に後期の作品に特別な思い入れのない私でさえおもしろくて先が楽しみだったのだから、ファンならばもっと色々な思いを抱くだろう。準備段階に当たる前半が終わり、いよいよクランクインというところで感じた読むのが楽しみなような恐ろしいようなという感情は、この手の本を読んで初めて感じた感情だった。

 ちなみに東宝ミュージックが発売した3セットからなる黒澤明映画音楽完全盤は後期作品をまとめた下巻だけ購入していない。リアルタイムで接することが出来た作品群なのに思い入れがないというのは妙なものだ。

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