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08/30/2006

サイボーグ

サイボーグとして生きる
著:マイケル・コロスト 刊:ソフトバンク・パブリッシング

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 "REBIRTH"という原題の方が内容にふさわしいのだが、まあ、それでは売れないだろう。仕方がない。
 人工内耳手術を受けた著者が半生を振り返るというのが主な内容。一人称で、しかも、訳文がこなれてあったので、一気に読めてしまった。人工内耳とは聴覚のない患者が耳の後ろの頭蓋に1インチ四方のシリコン(中にはパソコン並のチップ)を埋め込み、そこから蝸牛(鼓膜の奥にあるカタツムリの貝殻のような形をした器官)に線を突っ込み、その電気刺激を脳に音として認識させるというもの。チップには外付けのサウンドプロセッサーが拾った音が伝えられるのだが、そのプロセッサーや変換ソフトウェアによって聞こえ方が違うとか、それどころか、心の持ちようで音の認識が変わるとか、デジタルとアナログの難しさを感じさせる記述がおもしろい。
 著者は「コンピュータ神話に疑問を抱き始めたコンピュータオタク」というところだろうか。その分、冷静な目で自分の体にマイクロチップの集合体が埋め込まれることを観察している。そして、電子処理された音が聞こえてくることの戸惑い(枯れ葉を踏んだら聞こえてきた音が「チリンチリン」だった!)と、そこから派生する生活の中の変化、精神的な変化、成長を淡々と、時にユーモアを混ぜながら(いや、かなり笑える。自分の身でなければ)描いていく。さらにアメリカ社会における手話と口話の過去と現在や、ネットでのデートビジネスなどについても生活の中での関わりと共に紹介。手話と口話の対立など色々なことで知見が広がる。人工内耳の聞こえ方で『虎よ!虎よ!』のようなタイポグラフィが使われていたのも興味深かった。

 それにしても、繰り返し出てくるハリウッド映画のサイボーグに対する認識のいいかげんさについての恨み言には賛同する。『ターミネーター』のあいつらはすべてアンドロイド(ロボット)だろうがよーと昔から文句を言いたかった。他にも『600万ドルの男』よりも原作である『サイボーグ』の方が被験者の心情が現実的に描いてあったとか、SF読みとしてもおもしろい。

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